■減免や補助金、自治体が独自対策
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全国で増える空き家。その中には、そもそも居住目的でないものもあれば、解体したくてもできないものもあり、理由は様々。税金や建築基準法など制度上の問題がネックになって、処分が進まないケースも。周辺の環境が悪くなることなどへの住民の不安も強いため、独自の制度を設ける自治体が増えている。
埼玉県久喜市の女性(56)がかつて両親と住んでいた市内の家は4年ほど前、空き家になった。築50年ほど。状態が悪くリフォームも難しいため、解体を考え始めた。ネックになったのが、固定資産税の仕組み。この家の場合、空き家のままだと建物と土地を合わせた固定資産税は年間約2万8千円だが、解体して更地にすると年間9万円になる計算だった。早めに処分したい気持ちはあったが、「少しばかばかしく思えて」、空き家のまま置いておくことに。
解体して更地にするよりも、空き家のままの方が税金が安くなる…。住宅の敷地として利用されている土地の税負担を軽減する「住宅用地特例」は、住宅不足の解消にむけた新築奨励を目的に、1973年度に始まった。だが、今では、空き家の解体が進まない一因と指摘されている。処分に向けて動き出すきっかけになったのは、市が2021年に新設した制度。新たに空き家を撤去すれば最大3年間、固定資産税を減免でき、条件次第で、解体の補助金も出る。市担当者は「住宅用地特例が空き家の解体が進まない要因になっており、解体を促すために導入した。」と話す。女性は昨年3月、市役所に相談。市が協定を結ぶ、解体業者の見積もりを比較する会社の紹介を受け、3社の見積もりを経て、約150万円かけて解体し、土地も売ることができた。
神戸市では19年度から、現地調査で損傷が激しく家屋と認められないものについて、住宅用地特例の適用を解除。22年度は22件が解除された。新潟県見附市も、市独自の実態調査で危険だとされた空き家の家主らが解体に応じた場合、最長で2年間、税を減免する制度がある。12年から制度を始め、これまで10件に適用されたという。
■「再建築不可」物件、制限緩和も
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もう一つ、ネックになりやすいのが、狭い道路にしか接していない「再建築不可」の物件。建築基準法が定める条件を満たさない場合、一度取り壊すと新たに建てることができないため、そのままになるケースもある。一般的に木造住宅密集地域に多く、東京都では戦後の市街化などで主にJR山手線の外周部にでき、江戸川や練馬、大田区などに多いとされる。
独自の制度を設けている自治体もある。練馬区は、すでに2.7メートル以上の幅があることなどを条件に、道路を新たに整備しなくても、法律上の「道路」に指定できるよう取扱いの基準を緩和している。測量や図面の作成のための費用の助成もしている。