■そもそも賃貸物件用の火災保険とは
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▼入居者自身の家財を補償する「家財保険」
家財保険は、火災や漏水などに見舞われた際に被害に遭った、入居者自身の家財を補償するものです。これは自分が起こした災害だけでなく、「他人から被ったものについても補償を受けられる」と覚えておきましょう。
日本では失火責任法という法律により、「火災を起こした失火者に重大な過失(※)がない場合は、損害賠償責任を負わせない」ということが義務付けられています。つまり、自分が入居している隣の部屋で火災が発生し、もらい火で自分の部屋が延焼してしまった場合も、失火者に重大な過失がない以上は弁償を求められないのです。そうした「もらい火で被害に遭った際も補償が受けられる」というのが家財保険の特徴であり、加入するメリットとも言えるでしょう。
なお、一般的には「火災保険」と呼ばれているため、「火災が原因の場合のみ、補償が受けられる」と誤った理解をしている人もいるかもしれません。会社ごとに若干の違いはあるものの、一般的には火災の他に、落雷、漏水、爆発、盗難など、あらゆるリスクやトラブルを原因とするものが補償対象となっています。詳細については、各保険商品の説明をよく確認するようにしましょう。
※重過失の事例は、天ぷら油の入った鍋を火にかけたまま放置したことによる出火や、寝たばこによる出火など。火災の発生が予見できるにもかかわらず、適切な行為や措置を怠ったもの。
▼大家さんへの賠償責任を補償する「借家人賠償責任保険」
入居者が火災や漏水を起こしてしまった場合に発生する、大家さんへの賠償責任を補償するのが「借家人賠償責任保険」です。これは通常、火災保険の基本契約である家財保険とセットになっています。賃貸借契約書の記載のとおり、賃貸物件の入居者は大家さんに対して、善管注意義務と退去時の原状回復義務を負っています。したがって入居者は、善良なる管理者の注意義務を怠り、適切な管理をしなかったことによる善管注意義務違反や、原状回復義務を果たせない場合の債務不履行によって、大家さんへ損害賠償責任を負うことになります。 なお、債務不履行に基づく損害賠償請求は、失火責任法の適用を受けません。
▼他人への賠償責任を補償する「個人賠償責任保険」
「個人賠償責任保険」とは、日常で起こりうる他人への賠償責任を補償するもの。例えば、自分の過失によって漏水が発生し、階下の住人に損害を与えた場合や飼い犬が散歩中に他人に嚙みついてケガを負わせた場合など、室内外を問わず起こりうる、身近なトラブルが対象です。個人賠償責任保険は、自動車保険やその他の保険の特約で加入していたり、クレジットカードに付帯されていたりする可能性があります。重複している場合かつ加入する火災保険において個人賠償責任保険が特約である場合には、無理に特約を付ける必要はないでしょう。
■賃貸物件で火災保険に加入する目的とは
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▼あらゆるリスクに備えること
賃貸物件に限ったことではないですが、日々生活をする中では、火災、漏水、爆発、盗難などによって自分の家財が損害を被るリスクがあります。そんなリスクに備え、もしものときにも困らないようにするのが火災保険に加入する目的の1つです。
例えば、落雷によってパソコン(※)が壊れてしまった場合は、その買い替え費用が保険によって賄われます。意外と知らない人も多いのが、家財保険では「子どもがテレビに物を投げつけて壊してしまった」「誤って家具を倒して壊してしまった」という場合も補償の対象であるということ。つまり、家の中で起こる不測かつ突発的な事故によるものも補償に含まれているのです。
※ノートパソコンは保険会社によって対象外になることもある
▼万が一の賠償責任に備えること
火災を起こしてしまうことも、他人に損害を与えてしまうことも、絶対にないということは誰しも言い切れません。賃貸物件に損害を与えてしまうことで発生する大家さんへの損害賠償は、高額になるケースが多いでしょう。他人にケガをさせてしまった場合も同様のことが言えます。自分は賠償責任が発生する可能性は低いと考えるのではなく、その可能性は誰しもが等しく持っていると考える方が良いでしょう。火災保険の中には、借家人賠償責任保険と個人賠償責任保険の両方が特約となっており、家財保険のみを選択できるものもあります。しかし、目先の保険料額だけではなく、費用対効果をよく検討したうえで選択するようにしましょう。
■火災保険の相場と補償内容
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火災保険の相場と補償内容が分かる一例は以下のとおりです。条件として、東京都在住、20代、賃貸物件(鉄筋コンクリート造)住まい、延床面積26㎡を入力(一部、構造や広さの入力箇所がない会社あり)。保険料の支払いはすべて年払いです。
参照:各保険会社の見積もりページ(2021年5月17日時点)
これらは簡易計算であるため、詳細な見積りをした場合の各種金額はこのとおりではありません。しかし上記の例からも、同じ条件下で比較をした場合も各社で保険料や補償内容に違いがあることが分かるでしょう。なお、火災保険は、建物の構造によっても保険料が変わることを覚えておきましょう。同じ立地で同じ広さの物件であっても、一般的に燃えにくいとされる鉄筋コンクリート造と燃えやすい木造では、前者の保険料の方が安くなります。
■賃貸物件では火災保険の加入が必須?
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賃貸物件の入居において、火災保険への加入を義務付ける法律は存在しません。一方で上述のあらゆるリスクを踏まえ、多くの賃貸物件では大家さん側からの入居条件として、火災保険への加入を義務付けています。仮に入居条件に火災保険への加入が義務付けられていなかったとしても、加入しないのはリスクが高いと言えるでしょう。確かに火災保険の加入には、一定の支出が伴います。しかし、火災や漏水が起こるリスクやそれに伴って発生しうる損害賠償責任を考えた場合には、火災保険へ入らないという選択肢はないでしょう。
■賃貸物件の火災保険は自分で選べる?
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▼交渉すれば自分で選んだものに加入できる場合もある
賃貸物件の契約前後は何かと忙しく、「火災保険まで自分で考える余裕がなかった」「そもそも火災保険は自分で選べるとは知らなかった」という人が多いのではないでしょうか。自分で保険商品を選びたいという人は、事前に不動産屋さんに火災保険について確認をしたり、物件の契約日までに自分自身で他の保険を調べたりしましょう。
不動産屋さんの多くは、特定の損害保険会社と契約をして保険代理店の役割も担っているため、紹介できる火災保険に限りがあります。一方で、保険商品の見積りや比較はインターネットで簡単にできます。保険代理店に行かずとも、隙間時間を活用し、見積りをとってみると良いでしょう。
▼補償内容が自分の生活に見合ったものを選ぼう
人それぞれ家財の内容や量も異なる一方で、不動産屋さんからは一般的に必要であると考えられる補償がついたプランが提示されます。つまり、火災保険も個々の生活に合わせてプランを見直す必要があるのです。一人暮らしの場合は家財も少ないことが多く、必要と考えられる保険金額は安ければ100万円程度、高くても300万円程度であることが多いでしょう。保険金額は、請求時にその全額が支払われるのではなく、被害に遭った家財を再購入するために必要な費用分が、保険金額を上限として支払われます。したがって、「自分が所有する家財を再度買い揃える場合に、どのくらいの費用が掛かるか」をあらかじめ把握しておくと良いでしょう。
「保険料の安さを重視する」というのも1つの選択肢ですが、安価な保険料の場合は、水災風災などの自然災害や盗難などが補償の対象外となっているケースもあるので注意が必要です。加えて、補償対象の家財に何が含まれるかをあらかじめ確認しておくと安心です。安いものを選ぶ場合であっても、最低限、自分に必要だと思われる補償がついているものを選びましょう。
▼保険料や補償内容を見直して他社へ乗り換えできる場合もある
実際に見積りをとってみると、会社や商品、プランごとに保険料や補償内容に差があることが分かります。同じ補償内容なのに保険料が安いものや、同じ保険料なのに補償内容がより充実しているものが見つかるかもしれません。賃貸物件の火災保険は、管理会社に確認をして他社に乗り換えることができる場合もあります。入居時は何かと忙しく、不動産屋さんが紹介する火災保険に加入した人も、時間に余裕ができたタイミングで見直すのも良いでしょう。中途解約をせずに、更新のタイミングで他社のものへ替える、という選択肢もあります。
中途解約の場合は、解約返戻金が月割りで支払われるため、他社への申し込みができたらすぐに旧保険会社へ解約の申し込みをするようにしましょう。ただし、契約の残存期間によっては、返戻金がないケースもあります。
■火災保険と併せて入るべき?賃貸物件の地震保険
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▼地震による火災は火災保険の補償対象外
地震が原因で引き起こされた火災は、火災保険ではカバーされません。つまり、地震発生時に点いていたガスコンロの火が周囲に燃え移って家財が燃えてしまったり、居室内を傷つけてしまったりした場合の費用は、地震保険に入っていなければ全て自己負担となってしまいます。地震保険の加入には一定の費用がかかるものの、地震発生のリスクや地震による火災のリスクを検討することが重要です。火災保険同様、保険料や補償内容と照らし合わせながら、その必要性を検討するようにしましょう。
■まとめ
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多くの賃貸物件では、大家さん側からの入居条件として、火災保険への加入が義務付けられています。入居者にとって火災保険とは、火災を始めとする災害や事故が起こった際に、自分の家財と大家さんや第三者への損害賠償を補償するものです。特に損害賠償については高額になりうるため、仮に加入が義務付けられていなくても、もしもの場合に備えておくと安心でしょう。火災保険は会社や商品によって、保険料も補償内容も異なります。もしもの事態を想定し、自分にとって必要な補償が備わっているものを選ぶことが重要です。