■賃貸借契約の解約とは
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▼解約における普通借家契約と定期借家契約の違い
普通借家契約は中途解約が可能です。一方で、定期借家契約は原則として契約期間の満了をもって契約が終了します。定期借家契約であっても特約や一定の要件を満たせば中途解約ができる場合もありますが、事前によく契約書を確認しておく必要があります。「そもそも既存契約が解約できないのに次の物件を契約してしまった」ということがないように注意しましょう。
▼中途解約と期間満了による解約の違い
契約期間の途中で解約をするのが「中途解約」です。この場合、まずは契約書内の契約条項または特約に記載されている解約申し入れ期間を確認します。一般的には、「退去予定日の1ヶ月前までに通知する」というケースが多いです。また、「お金を払ってでも今すぐに退去したい」という場合には、解約申し入れ日から1ヶ月分の家賃を支払えば、即時解約ができます。一方で契約期間(通常は2年契約が主流)の満了日が近づくと、その旨が記載された通知が届きます。解約または更新の選択を求められるので、そのタイミングで解約をする場合は同封の解約通知書に必要事項を記入して返送しましょう。これが「期間満了による解約」です。あらかじめ、既存契約の契約期間を把握しておくことで、「更新料を支払った直後に中途解約をする」ということが起こらないように注意しましょう。
■賃貸借契約の解約の流れ
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▼解約の意思表示
転居先が決まり、引越し日の見通しが立ったら解約の意思を物件の管理者に電話で連絡をします。この物件の管理者とは、大家さん、または大家さんから管理委託をされている管理会社が該当。契約の仲介をした仲介会社が管理会社を兼ねているケースもあります。電話では、具体的な解約希望日や退去予定日を伝えましょう。解約については電話連絡のみで良い場合と、電話連絡に加えて書面の提出が必要な場合があります。本記事では書面での通知が必要である場合を例に記載しています。
▼解約通知書の作成 ~郵送 or FAX編~
通常、解約通知書は必要事項を記入・押印の上、郵送またはFAXで送付すれば事足ります。郵送の場合、可能であれば追跡サービスを付けて、いつ先方に届いたか分かるようにすると無難です。そうすることで解約希望日の1ヶ月以上前に書類が到達していることが証明でき、もしものトラブルを防ぐことができます。解約通知書は、入居時に受領した書類の中に入っている場合もあります。見当たらない場合は、不動産屋さんに問い合わせましょう。
▼解約通知書の作成~来店編~
通常は郵送またはFAXで事足りますが、「解約にあたり不動産屋さんに相談したいことがある」「解約通知を出すのが遅くなってしまい一刻も早く提出したい」「不動産屋さんが近所にある」などの理由で来店する人もいるかもしれません。書面へ記入・押印するという点は変わりませんが、印鑑の持参を忘れないようにしましょう。また、転居先住所や敷金や家賃精算時の振込先口座を記入する箇所があるので、それらがすぐに分かるようにしておくとスムーズです。なお、身分証明書の提示や添付は必要ありません。
▼退去、引き渡し前にやるべきこと
退去、及び引き渡し日が決まったら、少しずつ引越しの荷造りを始める人がほとんどでしょう。しかし、退去前は荷造り以外にもやるべきことがいくつかあります。参考までに、恐らくすべての人が必要になるであろう準備や手続きを以下に挙げます。
・引越し業者の手配
・公共料金やその他サービス(インターネット、新聞等)の解約・転居手続き
・住民票の異動
引越しシーズンであれば、業者の手配は思うようにいかないかもしれません。ガスの閉栓には立ち会いが求められる可能性があります。いずれにせよ、時間に余裕を持って準備をするに越したことはないでしょう。
▼退去、引き渡し
引越し業者による荷物の運び出しが全て終了したら、管理会社(大家さん)と一緒に居室内を確認し、キズや汚れの有無をチェックします。この立ち会いの所要時間は、おおよそ30分前後です。立ち会いは、敷金の精算にも関わる重要な時間と言えます。原状回復に伴う借主負担額が増えれば、返還額が減少する、または追加請求が発生する場合もあります。当然嘘はダメですが、伝えるべきことを確実に伝えるようにしましょう。例えば、「床の傷は入居時からあった」「壁の亀裂は地震が起こった際にできたもの」等。マンション管理規約や設備関係の取扱説明書類を預かっている場合には、この日までに返却しましょう。最後に鍵の返却を行います。鍵は当初渡されていたものに加え、ご自身で作成したスペアキーがある場合は併せて返却することが求められます。
▼敷金の精算
賃借人は通常、退去時に原状回復義務を負います。これは、通常の使用によって生じた物件の自然損耗や経年劣化を除き、賃借人の故意や過失によって生じたキズや汚れについては賃借人の負担で修繕をすることを意味します。つまり、退去立ち会い時にそれらの修繕箇所が見つかった場合は、その費用を「敷金から差し引く」ということです。特に修繕箇所がなく、ハウスクリーニング費用も契約書上で賃借人負担になっていない場合は、敷金が全額返還されます。退去立ち会い後、敷金精算に関する書類が送られてくるので、まずは契約書と照らし合わせて内容を確認しましょう。賃貸人、賃借人双方が内容に同意した後、指定口座に敷金の返還分が振り込まれます。なお、当初預けた敷金だけでは費用負担分に不足が生じる場合や、敷金ゼロの物件である場合は不足分の請求書が送付されるので、期限までに振込むようにしましょう。
■賃貸借契約を解約する際の注意点
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▼契約書にある解約申し入れ期間を守っているか
前述のとおり賃借人が中途解約を申し入れる場合は、「退去予定日の1ヶ月前までに通知する」と契約書に記載されていることが一般的です。ただし、物件の中には2ヶ月前、またはそれ以外の期間が定められているものもあります。特約事項を含め、念のため再度契約内容を確認しておきましょう。
▼解約理由に問題はないか
解約理由は解約通知書に記入欄があるほか、電話連絡の際に不動産屋さんから尋ねられる可能性があります。普通借家契約の場合は、原則として「解約理由によっては解約ができない」ということはありません。転勤や結婚、周囲の騒音が気になる等、差支えのない範囲で回答すれば問題ないでしょう。一方で定期借家契約の場合は状況が異なります。通常は中途解約ができない契約ですが、下記のいずれかの要件を満たした場合や特約事項に記載されている内容と合致する場合は、解約が可能です。
・居住の用に供する建物で床面積が200平方メートル未満のもの
・賃借人が、転勤、療養、親族の介護等のやむを得ない事情により、建物を生活の本拠として使用することが困難となった場合
▼解約に必要な費用は問題ないか
解約時は、前述のとおり敷金の精算が行われます。その他で心配になるのは違約金の有無ではないでしょうか。すべての契約において違約金が発生するとは限りません。特に注意が必要なのは、「礼金ゼロ」や「フリーレント〇ヶ月」というように初期費用が抑えられていた物件です。こうした物件は1年未満の短期解約時に違約金が発生する可能性があります。また、鍵の交換費用やハウスクリーニング費用を退去時の賃借人負担としている場合はそれらの支払いが発生します。
ペットを飼育している、または過去に飼育していた場合は注意が必要です。原状回復において、「ペット飼育を原因とする汚損や破損はすべて賃借人負担とする」という特約が定められている可能性があり、費用負担が高額になるケースもあります。心配な場合は、あらかじめ不動産屋さんに問い合わせをして見積りを依頼しておくと、急な支出にも慌てなくて済むでしょう。いずれのケースも契約書に明記されていることが大前提です。特に違約金については、契約書のみならず「重要事項説明書」にも記載されていなければなりません。契約書と重要事項説明書の両方を確認し、当初の契約内容に合致しない請求をされた場合には、すぐに不動産屋さんに問い合わせるようにしましょう。
▼転居先の契約は問題ないか
転居先が賃貸物件の場合は、契約書上で定められた契約期間初日から家賃が発生します。一方で、現在の住まいは日割り計算の場合、退去日までの家賃を支払います。ここで避けたいのは新旧家賃の二重払いです。「解約通知を出すのが遅くなったために家賃が二重払いになってしまった」ということがないように注意しましょう。家賃の精算については、日割り、月割り、半月割りのいずれかで行われる旨が契約書に記載されています。
・日割り:退去日までの家賃を日割り計算して支払う
・月割り:退去日が属する月の家賃を全額支払う
・半月割り:15日までに解約すれば半額、16日以降の解約は全額支払う
日割りの場合は退去日までの負担で済みますが、月割りや半月割りの場合は極力損がないように引越しの計画を立てることをオススメします。
■賃貸人からの解約について
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▼更新拒絶通知
賃貸人は契約期間満了の1年から6ヶ月前までの間に賃借人に対し、「更新をしない」旨を記載した通知を送ることが法律で定められています。仮に契約書上でこれよりも短い期間が記載されていたとしても、借地借家法に基づきその期間は無効となります。特約に記載されていても、これについては例外的に無効です。
▼正当事由かどうか
上記の通知に加え、賃貸人が賃貸借契約を解約するには正当事由が必要であると法律で定められています。法律に具体的な記載はないものの、客観的に見て賃貸借契約を継続することが困難である事情がある場合に正当事由と認められることが一般的です。
例:都市計画によって建物の取り壊しが決まった物件、建物の老朽化により安全性が確保できなくなった物件
▼契約書に則しているか
上記の他、契約書に記載されている「契約の解除」の条項に合致する場合は、上記の条件を問わず賃貸人からの契約解除が可能です。これは主に、家賃や共益費の不払いと言った債務不履行が発生した場合や、契約書上の禁止事項に違反した場合が該当します。
■まとめ
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賃貸借契約の解約は決して難しいものではありません。一連の流れを把握し一定の知識を備えておくことで、よりスムーズに進めることができます。引越しを見据え、何かと慌ただしいときだからこそ、想定外のトラブルは避けたいものです。まずは契約書をよく確認し、分からないことがある場合は不動産屋さんに問い合わせながら、余裕をもった準備を進めることが大切です。滞りなく退去ができるように、実際に退去日が確定したら再度本記事を読まれてみてはいかがでしょうか。