介護施設の種類と選び方



 

介護施設の種類は2つに分けられる
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介護施設には、目的や介護度に応じてさまざまな種類があります。親のために介護施設を検討し始めた人のなかには、施設の種類が多過ぎて、違いが分からず悩んでいる人もいるのではないでしょうか?介護施設の種類はさまざまですが、運営元によって、「民営施設」と「公営施設」の2つに大別できます。それぞれの違いについて簡単にご紹介しましょう。

 

▼民営施設

民営施設とは、民間企業が運営している施設のことです。高齢者の生活の満足度を高めることに重点を置いています。施設によって、提供されるサービスも価格帯もさまざまですが、公営施設よりも費用が高くなりやすい傾向があります。

 

▼公営施設

公営施設は、地方自治体や社会福祉法人、医療法人が運営している施設です。介護度の高い人や低所得者を支援することに重点を置いており、国の補助金を受けているため、民営に比べると費用が安くなります。人気があるので、入居待ちが長くなることが多く、入居条件も厳しくなる傾向があります。以上の2つの施設は、そのなかで種類が細かく分かれています。今回は、介護施設についてそれぞれの特徴、条件、費用などについての詳細を紹介していきます。

 

 

民営の介護施設の種類
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※月額費用はあくまで目安の金額であり、金額を保証するものではありません。

 

敷金や入居一時金など、入居時に費用が必要な施設が多いですが、入居時に費用がかからない民営施設もあります。しかし、その分、月額費用が高額になることもあるので把握しておきましょう。また、上記の表の月額費用はあくまで目安です。月額費用には家賃、管理費、光熱費、食費などが含まれるため、立地や設備によって大きく差があります。なお、医療費、理美容代、新聞代、おむつ代などは自己負担になり、介護が必要な場合はさらに介護費が必要になります。

 

▼介護付有料老人ホーム

介護サービスがついたシニア向けの施設です。軽度から重度の介護度の人や認知症の人などを受け入れており、看取りまで対応する施設が多くあります。また、数は少ないですが、お元気なシニアを対象にした施設もあります。介護スタッフが24時間常駐しており、掃除や洗濯などの家事サービス、買い物代行サービス、食事、入浴、排せつなどの介助サービス、またリハビリやレクリエーションなどのサービスを受けることができます。提携する医療機関から医療ケアや定期健診、訪問診療などの医療サポート、日中常駐する看護師による健康相談やアドバイスといったサービスを受けられます。運営は民間企業ですが、都道府県の認可を受けており、高額な施設から低価格な施設まで、費用はさまざまです。

 

▼住宅型有料老人ホーム

自立した元気なシニアから要支援・要介護の高齢者まで広く受け入れている施設です。自立したシニアを対象にしたホームもあれば、要支援・要介護向け、またその両者を受け入れる施設もあります。食事の提供、掃除、見守りなどの生活サポートのほか、リハビリやレクリエーションが中心で、日常の生活相談にも乗ってくれます。ただし、基本的に介護サービスはついていないため、介護が必要な場合は外部の介護サービスを利用することになります。なお、日中はスタッフが常駐しているため、緊急時には提携医療機関と連携して適切に対応してくれます。

 

住宅型有料老人ホームは、施設によって費用もサービス内容も異なります。基本的な設備を備えたホームもあれば、元気なシニアの暮らしを充実させるために図書室や美容室、シアタールームやフィットネスなど充実した設備を備えているところもあります。住宅型有料老人ホームを選ぶ際には、自分や家族に適した施設かどうか、よく検討して決めるようにしましょう。

 

▼健康型有料老人ホーム

自立型有料老人ホームともいわれる健康型有料老人ホームは、自立したシニアを対象とした施設で、元気なうちから入居できる点が特徴です。食事や生活支援などのサービスは提供されますが、万が一、入居中に介護が必要になった場合は退去しなくてはなりません。イベントやレクリエーションのほか、トレーニングルームや露天風呂など、元気なシニアが暮らしを楽しむためのサービスを提供する施設が多く見られます。入居条件は一般的に60歳以上としており、ほかの施設に比べると暮らしを楽しむための設備やサービスが充実しているため、入居金も月額利用料も高額になる傾向があります。

 

▼グループホーム

認知症の人が少人数で共同生活をする地域密着型の施設です。65歳以上で、要支援2以上、同地域内に住民票がある人が対象となります。家庭的な環境のもと、入浴や排せつ、食事などの日常生活の世話や機能訓練を受けることができます。

 

▼サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

元気なシニアに向けたバリアフリー対応の賃貸型集合住宅です。「サ高住」とも呼ばれます。日中は医療・介護の有資格者が常駐して、安否確認と生活相談サービスを提供しており、夜間は緊急通報システムを利用することができます。自立型と介護型の2種類があり、自立型は、介護が必要になると、外部の介護サービスと契約を結ぶのが一般的です。介護型は介護付有料老人ホームと同様に介護スタッフが24時間常駐しており、必要な介護サービスを提供してくれます。

 

シニア向けの住宅には、「シニア向け分譲マンション」や「高齢者向け優良賃貸住宅」「シニア向け賃貸住宅」などがあります。シニア向けの住宅には、シニアが暮らしやすいようにバリアフリー化され、コンシェルジュや安否確認といったサービスが提供される「シニア向け分譲マンション」や低所得なシニア世帯などに対して家賃補助がついた「高齢者向け優良賃貸住宅」、シニアが安心して生活できるよう配慮された「シニア向け賃貸住宅」などがあります。

 

 

公営の介護施設の種類
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公営の介護施設とは、地方自治体や社会福祉法人、医療法人が運営しているものを指します。民間が運営する施設と異なり、公営の介護施設は国の補助金を受けているため、入居費用が安くなる点が特徴です。公営の介護施設の種類と特徴を以下の一覧表にまとめました。

 

※月額費用はあくまで目安の金額であり、金額を保証するものではありません。

 

 

▼ケアハウス(軽費老人ホーム)

ケアハウスは、自立型と介護型の2種類に分類されます。自立型は、自立した生活に不安を覚える60歳以上の人が利用できる施設です。食事や掃除、洗濯などの生活サポートのほか、緊急時の対応サービスを受けることができます。ただし、介護サービスはついていないため、介護が必要になった場合は外部の介護サービスと契約するか、退去する必要がでてきます。介護型は、65歳以上で要介護度1以上のシニアを対象としています。食事や生活援助サービス、入浴や排せつ、機能訓練などを受けることができます。看取りを行っているところもあります。

 

▼特別養護老人ホーム

介護を常に必要とする、中重度の要介護高齢者向けの施設です。公営施設のため、民営に比べて費用は安く、看取りまで行ってくれます。介護スタッフは24時間常駐しており、最期まで介護を受けることが可能です。

 

▼介護老人保健施設

在宅への復帰を目指して心身の機能回復訓練を行う施設です。医師による医学的な管理のもと看護・介護が提供され、さらに専門職によるリハビリが受けられます。在宅復帰を目指す施設のため、入居期間は3~6か月程度とされています。

 

▼介護医療院(介護療養型医療施設)

たん吸引、経鼻経管栄養といった医療的ケアが必要な人向けの施設です。病院に併設されていることが多いため、万が一症状が重症化した際は、病院が受け入れる体制になっています。医療ケアと共に食事、トイレ、入浴の介助などの介護、そして看取りまでを行ってくれます。

 

 

希望の施設を絞り込むには?
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ここまで各施設の特徴を紹介してきましたが、種類が多過ぎてどう絞り込んでいけばよいか分からない人もいることでしょう。施設を絞り込むためには、上記の一覧表の「介護度」「費用」「認知症の受け入れ」「看取り」の4つに注目するとよいでしょう。ここからは、希望の施設を絞り込んでいくためのポイントについて解説します。

 

▼介護度

介護度によって入居できない施設があります。特に公営の施設は多くが要介護の高い人を対象にしているため、自立したシニアであれば民営の施設の方が選択の幅が広がります。また、「生活の不安を解消しながら自由な暮らしもしたい」という人は、サ高住のような住宅型施設をおすすめします。

 

▼費用

多くの有料老人ホームでは、「入居一時金」といわれる入居時のみにかかる費用と、毎月支払う「月額費用」が定められています。これらの費用は、施設によって幅があり、入居一時金が高額な施設は比較的月額費用が抑えられており、入居一時金がない施設の場合は、その分月額費用が高くなる傾向があります。施設を選ぶ際は、現在の収入と持っている資産、入居予定期間から慎重に検討することが大切になってきます。

 

▼認知症受入れ

介護が必要な人を対象とする民営、公営の施設の多くが認知症の人の受け入れが可能です。ただし、施設によって受け入れられる程度が異なります。また、車いすなど身体的な介護も必要な場合は、特別養護老人ホームや介護付有料老人ホーム、介護型サ高住などが選択肢としてあげられます。自宅に近い環境のなか、家事など自分でできることを続けながら暮らしたい場合は、グループホームがおすすめです。

 

▼看取り

最期まで同じ施設で過ごしたいと希望される人は多いと思います。看取りの対応は各施設によって異なります。民営、公営の施設に関わらず、重度の人を対象にしている施設は看取りまで行っていることが多くあります。看取りを希望する場合は、自分が望む最期を迎えられるか看護師の配置や医療機関との連携の状況、看取りの実績など具体的な内容を確認することが大切です。以上4つのポイントを見ていき、希望の施設を絞り込んだら、実際に見学することをおすすめします。

 

 

介護保険制度についても知っておく
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施設に入居した後、介護サービスを受けることになった際は、「介護保険制度」を利用することになります。介護保険制度とは、介護が必要な高齢者とその家族を社会全体で支える制度のことで、介護が必要になったときに役立ちます。40歳になると全ての人が介護保険制度に加入して保険料を負担することで、財源が賄われています。介護保険を利用すれば、安価で介護サービスを受けることができ、介護にかかる費用負担を減らすことができます。なお、介護保険を利用するには、要介護認定を受ける必要があります。

 

 

分からないときは相談窓口へ
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シニア向けの施設は、施設ごとに特徴や費用が異なります。分からないとき、迷ったときは、施設に資料請求や見学申し込みをする前に、一度、専門家がいる相談窓口へ聞いてみることをおすすめします。相談窓口には、「地域包括支援センター」があり、地域の介護施設に関するさまざまな情報を提供してくれると同時に、相談することができます。また、民間の紹介センターでは、全国の介護施設の情報を網羅的に把握しており、相談に乗ってくれます。

 

また、既に要介護認定を受けて在宅で介護サービスを利用している場合は、担当のケアマネジャーに相談することをおすすめします。ケアマネジャーは担当している人の心身の状態やご家族の状況を把握しているので、適切な施設を提案してくれることでしょう。