■40歳から支払いが始まる介護保険料
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「介護保険サービスを受けるために介護保険料を支払うことは分かっているが、一体いくらぐらい納付するのかが分からない」という人は多いのではないでしょうか?なかには「65歳になったら急に介護保険料の納付書が送付されてきて驚いた」という人もいるでしょう。今回は、介護保険料について、その支払い方法や介護保険料の全国平均額などについてお伝えします。
そもそも「介護保険」とは、介護を必要とする人が少ない負担で介護サービスを受けられることを目的に、介護を必要とする高齢者とその家族を社会全体で支える保険制度です。介護保険サービスは、国・市区町村の負担と、40歳以上の国民が支払う介護保険料によって支えられています。そのため、介護保険には、40歳からの加入が義務付けられています。なお、介護保険サービスを受けられるのは、以下の人に限られます。
・65歳以上(第1号被保険者)の要支援・要介護の認定を受けた人
・40~64歳(第2号被保険者)までの医療保険加入者で特定疾病が原因で要支援・要介護となった人
介護保険サービスを利用した場合、利用した本人が負担するのは、介護保険サービス料の1~3割です。残りの費用のうち、50%は国や自治体などの公費、そして残る50%は第1号被保険者と第2号被保険者から支払われる保険料でまかなわれています。
■介護保険料の支払い方法は?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
40歳になると支払いの義務が生じる介護保険料ですが、支払い方法は年齢によって異なります。40歳から64歳までと、65歳以上で支払い方法が変わるので、それぞれの支払い方を見ていきましょう。
▼40〜64歳の場合
第2号被保険者である40〜64歳までは、健康保険料の一部として介護保険料を納めます。会社勤めの人の支払い方法は、給料からの天引きです。自営業の人は、口座振替で支払うか、役所・銀行・コンビニなどに納付書を持参して、介護保険料が含まれた健康保険料を納付します。
▼65歳以上の場合
65歳になると第1号被保険者という区分に変わり、納付方法が変わります。これまで健康保険料の一部として支払っていた介護保険料を別途支払うことになるのです。さらに、年金の受給額に応じて、「特別徴収」と「普通徴収」の2種類の納付方法に分かれます。それぞれについて見ていきましょう。
1、特別徴収
年間18万円以上の年金を受給している場合は、年金から自動的に天引きされる「特別徴収」で納付します。年金から天引きされるため、特別な手続きを行う必要はありません。
2、普通徴収
受給している年金が年間18万円以下の場合、あるいは年金の繰下げ受給を選択した場合は、「普通徴収」で納付します。普通徴収は、口座振替にするか、役所・銀行・コンビニなどに納付書を持参して支払う方法です。
なお、専業主婦(夫)で64歳まで介護保険料を配偶者の健康保険料とともに納付してきた場合でも、65歳になると、特別徴収か普通徴収のどちらかで、介護保険料を納付することになります。ちなみに、第2号被保険者から第1号被保険者に変わり、介護保険料の納付方法が変わるのは、満65歳の誕生日の前日からです。たとえば、4月1日生まれの人であれば、前日の3月31日に第1号被保険者になるため、3月分の介護保険料から納付が始まります。また、65歳から介護保険料を納付すると、確定申告を行う際に「社会保険料控除」を受けられるようになります。介護保険料は、所得から全額控除されますから、忘れずに申告するようにしましょう。
■介護保険料はいくらかかる?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
年齢や年金受給の額によって納付方法が変化する介護保険料ですが、その金額が気になりますよね。介護保険料は3年に1度改定されていますが、年々値上がりしている傾向にあります。第1号被保険者の2018~2020年までの介護保険料の全国平均は月額5,869円でしたが、2021年の全国平均は月額6,014円で、初めて6,000円を超えました。介護保険料の地域格差も広がっており、下は3,000円台、上は9,000円以上と、3倍近い差があります。値上がりの主な要因は、高齢化の進行と介護保険サービスを提供する事業所に支払う介護報酬の引き上げです。
▼40〜64歳の場合
加入している医療保険によって、納付する介護保険料は異なります。
●会社の健康保険に加入している人
「標準報酬月額」によって介護保険料が決まります。標準報酬月額とは、毎年4~6月の給与の平均額を「標準報酬月額表」の等級に当てはめて決めるものです。この表は、都道府県によって異なるほか、自分の会社が加入している健康保険組合でも異なります。なお、会社員の場合は、被保険者と事業主が折半で介護保険料を負担します。また、夫(妻)の扶養に入っている場合は、保険料を納める必要はありません。
●自営業で国民健康保険に加入している人
所得や世帯の被保険者の数、資産などに応じて市区町村が介護保険料を決めます。
▼65歳以上の場合
介護保険料は市区町村によって異なります。理由は、介護保険を利用する人の割合、需要の多い介護サービス、そして介護サービスにかかる総費用が異なるためです。介護保険料は、前年度の所得をもとに算出され、その金額は3年ごとに見直されます。また、各市区町村の条例で決められた基準額をもとに、介護保険料は本人や世帯の所得によって段階的に設定されており、所得が多くなるほど、保険料を多く支払う仕組みになっています。所得段階の設定は、市区町村によって条例で弾力的に決めることができるため、所得段階は6段階から15段階とさまざまですが、標準は9段階です。以上のように、介護保険料は市区町村で異なるため、具体的な介護保険料を知りたい場合は、お住まいの市区町村のホームページで調べるか、窓口に連絡して確認することをおすすめします。
■介護保険料を滞納するとどうなる?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
介護保険料には納付期限があります。万が一納付が遅れた場合はどうなるのでしょうか?また、数年間、滞納した場合はどのような支障があるのでしょうか?具体的に見ていきましょう。
▼期限を過ぎて1年未満の場合
納付期限から20日以内に督促状が発行されます。この場合、延滞金や督促手数料も併せて請求されます。延滞金は、納付期限の翌日から納付した日までの日数で計算されます。市区町村で延滞金・督促料は異なりますが、翌日から1か月未満の場合は延滞した保険料の4.3~14.6%になります。1か月以上の場合は、延滞金の14.6%が一般的です。
なお、督促料は1回70~100円です。
▼期限から1年以上経過した場合
介護保険サービスを利用した際に、本来なら1~3割支払うところを、全額(10割)を支払わなければいけなくなります。ただし、その後、滞納分を納付して申請すると、10割支払ったサービス利用料の9~7割が払い戻されます。
▼期限から1年半以上経過した場合
介護保険サービスを利用した際に、上記と同じく、全額(10割)を支払わなければいけなくなります。しかし、滞納期間が1年半以上の場合は、滞納分を後から納付しても9〜7割が戻ってこなくなります。滞納した保険料に充てられるためです。
▼期限から2年以上経過した場合
後払いができなくなります。2年以上滞納すると、「未納」が確定されます。この場合、介護保険サービスの利用者は本来なら1~3割を負担すればよいのですが、自己負担の割合が3~4割へと上がります。また、高額介護サービス費制度を利用できなくなり、自己負担額が増えるため、注意が必要です。
■介護保険料が減免されるケースもある!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
著しく収入が減少した場合や、震災・火災・風水害などの災害で大きな損害を受けた場合、介護保険料の減免を申請することができます。申請が認められた場合、3か月程度から1年まで保険料が減免されます。また、納付期限延長の猶予もあります。長期の入院や事業の廃止、失業などで収入の減少が見込まれる場合は、放っておかずに、すぐに市区町村に申請するようにしましょう。申請方法は市区町村ごとに異なりますが、収入の減少を証明する書類や、罹災証明書などが必要になります。
■介護保険料の支払いは
納付漏れがないように見直そう
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
40歳から納付が義務付けられ、生涯納付していくことになる介護保険料ですが、介護保険サービスは自分の将来の介護生活を支えてくれる大切な制度です。いざ介護が必要になったときに、自分の負担だけでなく、介護をする家族の負担も軽減してくれます。40歳から64歳までの間は、介護保険料は健康保険料と一緒になって給料から天引きされているため、介護保険料の存在に気づいていない人もいることでしょう。しかし、65歳からは給料から天引きされることもなく、自営業の人であれば国民健康保険料とは別に、自分で介護保険料を支払うことになります。
なかには自分はまだまだ元気なので、介護保険サービスは不要と考える人もいるかもしれませんね。しかし、介護保険制度は将来の自分や家族を支えるものです。2年間滞納すると充分なサービスを受けられなくなるので注意しましょう。将来の自分と家族のために、介護保険料をしっかり納付して、これからのシニアライフを安心して送れるようにしてくださいね。