■「高級老人ホーム」とはどんな所?
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ずっと安心して暮らしていくために、老後の住まい選びは重要です。自分が、または親が、不自由なく元気に日常生活を送れることは、誰もが願う理想といえるかもしれません。そこで、将来の住まいを検討するときに、高級老人ホームに興味を抱く人も多いのではないでしょうか?
高級老人ホームとは、一般の老人ホームよりも豪華な設備をそろえていて、充実した手厚いサービスが受けられるという特徴があります。民間企業が経営する有料老人ホームは、公的な団体が経営する老人ホームに比べて手厚いサービスを提供する傾向にありますが、なかでも高級老人ホームのサービスは際立っています。顧客満足度を重視する高級老人ホームは、東京や大阪など、都市部を中心に建てられており、今後も需要が見込まれています。
こだわりのサービスを追求した結果、高級老人ホームは、一般の老人ホームと比較して、入居費用が高いといえます。そのため入居者は、元経営者や医師といった富裕層が多い傾向があります。入居を現実的に検討するためには、しっかりとした資金計画を立てる必要がありますね。今回は、高級老人ホームの具体的な特徴や費用の内訳、施設選びのポイントまでご紹介します。
■高級老人ホームの特徴
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高級老人ホームでは入居者に安心と充実した暮らしを提供するために、立地や設備、人員体制や食事、アクティビティなどにこだわっています。ここでは高級老人ホームの特徴を具体的にお伝えします。
▼立地環境
高級老人ホームは、交通の利便性がよい都市部を中心に建てられています。主要駅から近く、周辺には生活に必要な商業施設が多いといった便利な環境を備えた施設も目立ちます。その一方で、あえて都心から離れ、風光明媚な人気のリゾート地に施設を展開する事業者もあります。都心を離れて、のんびりと老後の生活を送りたい人にはこちらも魅力的ですよね。入居を希望する人は、交通利便性を重視するのか、自然環境を重視するのか、それぞれの希望に合わせて施設を選ぶことができますよ。
▼建物
高級老人ホームの大きな特徴の1つが建物や家具・インテリアに高級感があるということでしょう。高級ホテルのような立派な外観や上品な内装のほか、調度品や家具なども豪華でハイセンスなものが使用されている場合が多いです。また、室内のバリアフリー化が徹底されていたり、部屋の間取りにも十分なスペースが確保されていたりと、安全面でも使い勝手がよい傾向があります。
▼共用設備
ホーム内の共用設備が充実していることも高級老人ホームならではの魅力といえます。たとえば、カラオケやフィットネスの専用ルーム、プール、ダンスホール、シアタールーム、図書館、理美容室など種類も多く、一般的な老人ホームでは見られないような設備が充実しています。
▼食事
高級老人ホームは、食事面でも大きな特徴があります。フレンチや寿司など、有名なホテルやレストランの監修による健康に配慮した多彩なメニューが楽しめたり、予約不要で複数のメニューやアラカルトから選択できたりする施設もあります。また、イベントの際に提供される特別なメニューや高級店の出張サービスにも対応するなど、バリエーション豊富な食が楽しめます。
▼イベント・レクリエーション
高級老人ホームでは、趣味の時間をより楽しめる環境が整った施設も多くあります。ヨガやフィットネス、陶芸、英会話など、専門の講師を招いてカルチャースクールのように趣味を楽しめる施設もあります。また、国内外の観光ツアーやクルーズ旅行、プロの音楽家を招いたイベントを定期的に開催するなど、余暇を充実させる魅力的なプログラムが用意されていますよ。
▼医療・介護体制
往診や夜間の緊急対応など、医療機関と密接に連携していて、なかにはホーム内にクリニックが併設され、医師や看護師、介護士などの専門家が24時間365日体制で常駐している施設もあります。また、一般的な老人ホームの基準よりも介護スタッフを手厚く配置していたり、理学療法士が常駐してリハビリを行ったりする施設もあります。医療や介護の体制が一般的な老人ホームより強化されているため、入居者もその家族も安心できる環境が整っています。
■高級老人ホームにかかる費用は?
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高級老人ホームは、一般的な老人ホームと比べてサービスやサポート体制が充実していることから、入居一時金や月額利用料が高額です。では高級老人ホームへの入居には、いったいいくらくらいの費用が、どんなタイミングで必要になるのでしょうか?かかる費用の目安や支払方法についてご紹介します。
▼高級老人ホームにかかる費用の内訳
高級老人ホームでは、入居する際に必要な「入居一時金」と、月々支払う「月額利用料」が必要な施設が多くあります。それぞれの内訳を見ていきましょう。
「入居一時金」
入居一時金とは、老人ホームに入居する際に必要になる前払い金のことです。多くの老人ホームでこの入居一時金を支払う方式が採用されています。入居一時金は、一定期間の家賃を前払いするというシステムです。ただし、入居一時金の額は施設によって異なり、数千万~1億円以上まで幅があります。なお、入居一時金を採用している多くの老人ホームが、償却期間内に退去した場合に入居一時金の一部を返還する返還金制度を設けています。初期償却の割合や償却期間によって、返還金に大きな差が生じるので、事前に内容を確認する必要があります。
「月額利用料」
月額利用料は、家賃や管理運営費、食費、光熱費など、老人ホームでの暮らしに毎月必要となる費用です。また、介護サービスや医療サービスについての費用は、別途支払うことになります。高級老人ホームの月額利用料は、一般的に20~50万円くらいが目安です。これはあくまでも平均値であり、なかにはそれ以上かかる施設もあります。気になるホームを見つけた場合は、その都度費用を確認するとよいでしょう。
▼費用の支払い方法
「入居一時金全額前払い」
終身にわたる賃料を入居一時金として一括で前払いする支払い方法です。賃料を最初に支払うため、毎月の支払い額が抑えられるというメリットがあります。ただし、初期費用の負担が大きいので資金が潤沢にある人でないと難しいでしょう。
「入居一時金一部前払い」
終身にわたる賃料の一部を入居一時金として支払う方法です。入居一時金としてある程度まとまったお金を支払っているため、月払いよりも月額利用料が抑えられるというメリットがあります。反面、全額払いほどではありませんが初期費用の負担は出てきますので、資金に余裕のある人に向いています。
「月払い」
入居の際に入居一時金を支払わずに、月ごとに賃料や必要な経費を支払う方法です。前払い金がかからないため、初期費用を抑えられるというメリットがあります。一方で、月額利用料としてかかる費用は、入居一時金を支払うよりも多くなります。現在、多くの老人ホームで入居一時金払いと月払いが選択できるようになっています。どちらの支払い方法が自分や家族に合っているのかよく相談して選びましょう。
■高級老人ホームの入居条件
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▼健康状態
高級老人ホームでは、入居受け入れ可能な健康状態の基準が施設ごとに設定されています。たとえば、入居条件を自立して生活できる人に限っている施設もあれば、軽度の介護状態であれば受け入れる施設もあります。要支援、要介護、認知症の受け入れの可否については、希望する施設に直接問い合わせてみてください。また、入居時には基準にかなう健康状態であったとしても、入居後に健康状態が変化することがあります。介護が必要になってしまうと、介護居室に移動になる場合があるため、入居を決める前に、介護が必要になった場合の対応についても施設に確認しておくことをおすすめします。
▼身元保証
高級老人ホームに限りませんが、ほとんどの老人ホームでは、入居の際に身元引受人や保証人が必要です。一般的には、身元引受人や保証人は入居希望者の家族が任されることになります。
もし、家族や親族がいない場合には、民間の保証会社や成年後見制度の利用が可能な施設もありますので、施設に相談してみましょう。
▼支払い能力
高級老人ホームの入居では、入居者の支払い能力の有無も条件の対象となります。そのため、入居希望者の収入や資産の状態を事前審査として確認されることがあります。ただし、入居の審査基準については、施設によって異なるため、1つの施設で入居を断られたからといって別の施設への入居もできないとは限りません。高級老人ホームを申し込むときは、複数のホームを検討することも想定しておいたほうがよいでしょう。
■選び方のポイント
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▼費用面
高級老人ホームを選ぶ際には、費用面を十分に考慮してから決めましょう。高級老人ホームは、一般的な老人ホームよりもさらに高額な費用がかかります。入居一時金は支払うことができても、その後も長きにわたって月額利用料を支払い続けることが可能かどうか検討しておく必要があります。事前に100歳くらいまで生きた場合、入居期間はどれくらいになり、いくらぐらいかかるのかを算出しておくと安心です。将来介護が必要になったときのことも想定して、無理なく支払い続けられる施設を選択しましょう。
▼生活面
高級老人ホームを選ぶ際には、その施設で楽しく生活していけるかも重要な要素です。あらかじめアクティビティや入居者の属性などを確認したうえで、自分が求めるライフスタイルに合っているかをチェックしましょう。高級老人ホームに入居する人にとっては、趣味や習い事など余暇を楽しむゆとりのある生活を送ることも大きな目的となっています。そのため、自分が興味のあるレクリエーションやイベントが楽しめるかといった生活面での充実度も選ぶ際のポイントとなります。また、立地条件も重要です。都市部であれば、近隣の商業施設に徒歩で買物に行くこともできますし、家族が面会に来やすいでしょう。一方、リゾート地であれば、自然豊かな環境で日々散歩を楽しむこともできます。自分や家族にとって重視したい条件が何であるかを考えて決めましょう。
▼サービス面
日常で利用したい生活支援サービスがあるかということも選ぶ際の検討材料となります。コンシェルジュや家事代行、買い物や病院への付き添い、安否の確認といったサービスの有無を確認し、それらが月額利用料に含まれているか確認しておきましょう。ほかにも、医療や介護の体制も重要です。施設内で定期的な診療を受けることはできるか、健康状態が変化したときにすぐに提携の医療機関に受け入れてもらえるのかといったことも事前に確認しておくとよいでしょう。老後に住み続けることになる施設を検討するなら、実際に施設へ行って見学することも大切です。
■充実した老後の暮らしのために
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これまで、高級老人ホームで暮らすことが、いかに老後の毎日を豊かにしてくれるのかについてご紹介してきました。もちろん、老後の生活にどのくらいの費用をかけるかは、それぞれの価値観で異なります。ただ、「充実した生活や安心できる暮らしができそうだ」、と期待できる要素が高級老人ホームには多くあるといえるでしょう。
ちなみに、高級老人ホームに夫婦での入居を検討する場合、2人部屋は安心できる反面、どちらかの介護度が上がると一方の負担が大きくなることもあります。施設によっては介護居室を用意しているところもありますので、将来的にお互いの健康状態に変化が見られたら居室を分けるという選択肢も含めて考えてみることをおすすめします。なお、「自分の親にはなるべく快適な住まいで生活してほしい」と願う子世代は、入居一時金が支払えるか、長期で月額利用料を支払っていけるのか費用面のシミュレーションをしっかりと行っておくとよいですね。状況によっては、実家を売却したり、賃貸にしたりすることで費用を得るなど、具体的な資金計画についても検討してみてはいかがでしょうか?