空き家の活用方法とは?



 

空き家問題とは?
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近年、日本の深刻な社会問題のひとつに、「空き家の増加」があります。新聞やテレビなどで空き家問題が報道されるのを見たことがある人は多いのではないでしょうか?通常、空き家には別荘や賃貸物件も含まれますが、社会問題になっているのは、居住実態がない住まいのことです。政府の報告によると、1998年から2018年までの20年間で空き家は1.9倍に増えており、2018年の空き家総数は347万戸に及びます。さらに「国土交通白書2018」では、2033年には空き家が全国総住宅数の30%を超えると予想されています。こうした空き家増加の背景には、人口減少や少子高齢化が深く関係しているといわれています。今回は空き家が問題視される理由や空き家を放置した場合の損失、さらに賢く空き家を活用する方法についてご紹介します。まず、空き家を放置するとどんな問題があるのかを見ていきましょう。

 

▼周辺環境を悪化させる

空き家は、近隣とのトラブルに発展するケースが多いため、社会問題になっています。管理されていない空き家が問題視される理由は、放火や不法投棄などの犯罪の温床になりやすいうえに、景観の悪化につながったり、異臭問題を引き起こしたりするためです。

 

▼放置すると金銭的負担が大きくなる

空き家のまま放置した場合、「特定空家」に認定され、所有者は金銭的な負担が増える恐れがあります。特定空家とは、「周辺環境に悪影響を及ぼす空き家」のことで、判断は自治体が行います。自治体は環境を悪化させる空き家があると、「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、立ち入り調査を行います。その際、倒壊の危険性があり、衛生上有害な空き家と判断されると、「特定空家」に認定されます。その後、自治体によって空き家の所有者に適切な管理をするよう助言、指導、勧告、命令が行われます。もし、「特定空家」に認定された場合は、以下のような金銭的な負担がかかってきます。

 

罰金

命令に従って空き家の状態が改善されない場合、50万円以下の罰金が課せられます。ただし、この罰金は、行政上の秩序を維持するための制裁金であり、刑法が定めた刑罰としての罰金とは異なるため、前科が付くことはありません。

 

解体費用

特定空家をそのまま放置しておくと、行政代執行が行われ、強制的に自治体が所有者に代わって空き家の解体除去を行います。その解体費用は後で所有者に請求されます。

 

固定資産税の軽減措置の解除

特定空家に認定されると、固定資産税の軽減措置がなくなるため、支払い額が高くなります。空き家を所有していると毎年、固定資産税や地域によっては都市計画税を支払います。しかし通常は軽減措置が取られており、200m²までの部分は6分の1に、200m²を超える部分は3分の1に減額されています。特定空家に認定されると、固定資産税の軽減措置がなくなり、更地と同じ税金が課せられます。つまり、土地が200m²までであれば、軽減措置適用時の6倍の固定資産税を支払わなければなりません。また、都市計画税も特例によって、200m²までの部分は3分の1、また200m²を超える部分は3分の2が減額されていますが、この特例も解除されます。相続や贈与などで取得した空き家を放置すると、周辺環境を悪化させるだけでなく、所有者自身が大きな損失を被ることになります。無駄な出費を抑えるためにも、空き家は放置せず、「売る」または「貸す」という方法を取ることが得策です。

 

 

空き家の活用法は?
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放置すると周囲にも所有者にも大きな被害をもたらす空き家。しかし、実際には、空き家を利用してビジネスを行う企業もあり、使い方次第では有用な資産であるといえます。実際に空き家の活用方法にはどのようなものがあるのか、見ていきましょう。

 

▼リフォーム・建て替えて貸す

立地がよければ、一戸建て賃貸住宅として賃貸に出す方法があります。一戸建て賃貸には、居住者が長く住み続けるという傾向があるため、長期的に賃貸収入が見込める傾向にあります。また、固定資産税や都市計画税などの支払いも賃貸収入から充てられるようになるので、支払いで悩むことが少なくなるでしょう。そのまま貸し出せる状態でない場合は、必要に応じてリフォームを行い、第三者に賃貸住宅として貸せば、賃貸収入を得ることができます。

 

リフォームではなく、空き家を解体した後、アパートやマンションに建て替えるのもよいでしょう。アパートやマンションの経営をすると、毎月、住戸分の賃貸料が収益となります。ただし、解体費用・建て替え費用を上回るほどの収入を得るまでに時間がかかるうえに、家賃の設定によっては収支計算が合わないケースも出てきます。詳細な事前調査をしてから、検討するようにしましょう。

 

また、賃貸需要が少ない地方では借り手を見つけることが難しいこともあります。そのため事前に借り手がいるエリアであるかどうかを調べておくことが大切です。また、アパート経営をするとなると、日々のメンテナンスや修繕依頼の対応などの管理業務が必要になる点に留意しておきましょう。空き家を貸す方法には、上記以外にもいろいろな方法があります。賃貸住宅以外の貸出アイデアを以下にご紹介しましょう。

 

▼シェアハウスにする

空き家をリノベーションして、シェアハウスを自分で経営したり、外部委託したりする方法もあります。シェアハウスのメリットは、一軒家を1人に貸すより、数名に貸したほうが更に利益が多くなる場合がある点です。また、1人に貸した場合、借り手が退去すると家賃収入が完全に途絶えますが、シェアハウスの場合は、1人が出てもほかの人からの家賃収入があるため、全員が退去しない限り、完全に収入が途絶えることは少ないでしょう。だだし、入居者が増える分、管理業務が煩雑になることは覚えておきましょう。

 

▼民泊として利用する

空き家を宿泊施設として旅行者に提供する方法もあります。「民泊」と呼ばれるこの方法は、近年普及してきました。民泊は管理会社に任せて業務を代行してもらうことができるので、楽な活用方法かもしれません。また、一般的に一軒家を賃貸として貸し出す賃料に比べると、宿泊料金のほうが高額になるため、利益率がよいといえます。ただし、民泊の場合、利用者が多ければ収益になりますが、利用者がいなければ、収益にはつながりません。

 

▼介護事業者に貸し出す

空き家は、共同生活援助のためのグループホームやデイサービスの場として、介護事業者に貸し出すことも可能です。グループホームやデイサービスはもともと一戸建てが多いため、高齢者が住みやすいように改修すれば、介護事業者に貸し出せます。介護事業者に貸すことで、安定した収益を得られるようになります。

 

▼セーフティネット住宅として貸す

高齢者、子育て世帯、障害者、被災者などの「住宅確保要配慮者」に貸し出すのもよい方法です。そのためには、住宅確保要配慮者の入居を拒まない「セーフティネット住宅」として登録します。セーフティネット住宅に登録するには、床面積25㎡以上で耐震性があり、建築基準法、消防法を守った住宅であることなどが条件となります。ただし、セーフティネット住宅として貸し出す場合、一般の賃貸より賃貸料は安くなり、収益性は低くなる傾向があります。売却や通常の賃貸物件としての貸し出しが難しいと感じた場合は、セーフティネット住宅として貸すことも得策の1つになるでしょう。

 

▼シェアオフィスとして貸す

シェアオフィスとは、会員登録したメンバーが共有で仕事場として使うスペースのことです。リモートワークが普及したことがきっかけとなり、近年ではシェアオフィスの増加傾向が見られます。空き家にインターネット環境を整備し、プリンター、シュレッダーなどを準備すれば、シェアオフィスとして貸し出すことができます。会員が増えれば、高い収入につながる可能性もあります。

 

▼時間貸しスペースとして貸す

初期費用を抑えたい場合は、空き家を時間貸しする方法もおすすめです。時間制のレンタルスペースとして貸し出せば、ヨガ、ホームパーティー、ママ会、会議、セミナー、撮影など、幅広いニーズを捉えられます。

 

▼店舗として貸す

飲食店や販売店として貸し出すのも一案です。ただし、店舗として貸し出す場合、借主に内装リフォームをしてもらうことになるため、原状回復ができなくなるケースもあります。一方で、店舗として貸す方法は、一般的に個人に貸すよりも家賃滞納のトラブルが起きにくく、収益性が高い賃貸方法だといえるでしょう。

 

▼トランクルームとして貸す

空き家の中を1畳ほどのスペースで仕切って、トランクルームとして貸し出すこともできます。人が住むわけではないため、管理はほかの賃貸方法に比べて楽でしょう。運営は、自分で行うか、あるいは一括でトランクルームの事業者に借り上げてもらう方法があります。借り上げてもらう場合は、集客や契約を一任できます。

 

▼更地にして貸す・売却する

建物が老朽化している場合は、解体し、更地にして貸す、あるいは売却する方法があります。貸す場合は、そのまま更地を貸すだけでなく、駐車場にして貸し出すこともできます。駐車場として貸し出す場合は、借り手が存在するかどうか、市場調査をしてから着手しましょう。また、土地が道路際であれば、コンビニエンスストアなどのテナントに貸し出す方法もあります。もし、土地がメインの道からそれた場所にあるなら、野立て太陽熱発電施設用の土地として貸し出すこともできるかもしれません。土地を貸す方法を選ぶ場合は、子孫に土地を残せるというメリットがあります。なお、売却する場合は、空き家を解体した後の「更地」を売却するほうが、家が建っている状態の「古家付き土地」よりも一般的に早く売却できる可能性があります。

 

 

政府や自治体の取り組みを活用する
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空き家が社会問題となっている今、行政が主体となってさまざまな方法で空き家活用に取り組み、推進しています。自治体の取り組みを積極的に利用することで、スムーズに活用や売却ができるケースもあります。どのような取り組みがあるかを見ていきましょう。

 

▼DIY型賃貸にする

所有する空き家を、政府主導で取り組んでいる「DIY型賃貸」にする方法もあります。DIY型賃貸とは、借り手が費用を負担して修繕やリフォームを行うことができ、退去時の原状回復は不要という制度です。貸し手にとっては、修繕費をかけずに済み、さらに借り手にとっては自分好みにリフォームできるメリットがあります。DIY型賃貸借は、貸し手と借り手のニーズが合った賃貸方法といえるでしょう。

 

▼公的に活用する

自治体に活用してもらうという方法もあります。最近では、空き家を避難所や備蓄倉庫として利用する自治体も出てきています。また、近隣の住民が集えるコミュニティカフェとして利用したり、図書館や公民館として空き家を活用したりする自治体もあります。また、空き家を子ども食堂として活用するのもよいでしょう。子ども食堂とは、自治体が主体となり、無料、あるいは低料金で子どもたちに食事を提供する場のことです。さらに、自治体が移住を推進している場合、移住体験用の住宅として自治体に貸し出すこともできます。詳しい情報を知りたい場合は、空き家がある自治体に連絡して、どんな活用方法があるか相談してみるとよいでしょう。

 

▼補助金制度を利用する

空き家の活用を促進するため、改修・解体などの各種補助金制度を用意している自治体が多くあるので、利用をおすすめします。自治体によって補助してもらえる内容は異なりますが、自治体の補助金制度を上手に利用すれば、空き家の活用に役立てられるでしょう。空き家のある自治体の窓口で尋ねるか、ホームページで調べてみてくださいね。

 

 

諸制度を活用して空き家対策をしよう!
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年々増加傾向にある空き家。そのまま放置しておくと、地域社会にとっても所有者にとっても不利益になることはお分かりいただけたでしょう。今回ご紹介したように、空き家は売却したり、貸し出したりと、活用する方法は多様です。自治体で空き家の処理をサポートしてくれるサービスがあるので、自治体に相談し、利用しながら賢く対処していくことをおすすめします。そうはいっても、簡単に対策を決められないという人は、当社の「空き家の巡回サポート」の利用を検討してみてはいかがでしょうか?定期的に空き家を巡回し、劣化防止のサポートを行っております。