年金生活どうなる?



 

■1か月にどのくらい年金をもらえるの?
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世界に先駆けて超高齢社会に突入した日本において、将来の年金生活に不安を覚えている人は多いのではないでしょうか?生命保険文化センターが実施した「生活保障に関する調査」(2019年12月発行)によると、調査対象者のうち84.4%もの割合の人が、「自身の老後生活に対して不安を感じる」と答えており、高齢者の貧困は年々大きな問題となっています。年金生活への不安を解消するためには、老後にいくら年金をもらえるのかを具体的に把握し、あらかじめ将来設計をしておくことが重要です。年金は加入期間の長さや、加入中の給与額などに応じて計算されるため、人によってもらえる年金額はさまざまです。ここでは、いくつかのケースを想定して年金の目安額を見ていきましょう。

 

▼会社員・公務員の場合

会社員や公務員の人は、国民年金の第2号被保険者に属します。この場合、加入している厚生年金の制度からまとめて国民年金に拠出金が支払われるので、厚生年金(老齢厚生年金)と国民年金(老齢基礎年金)という2つの公的年金(老齢年金)を受け取ることができます。2021年における厚生年金の受給権者(受給の権利を有する者)の平均年金月額は14万3,965円、国民年金の受給権者の平均年金月額は5万6,368円なので、2つの年金受給者の平均額の総額は20万333円となります。なお、厚生年金の保険料は収入に応じて変わり、それに伴い支給される年金受給額も増減するため、この数字は参考程度にとどめておきましょう。また、公務員の場合は「退職等年金給付」という制度があり、上記の公的年金に加えてさらに年金がもらえます。会社員の場合も、会社によっては企業年金をもらえる可能性があるので、あらかじめ確認しておきましょう。

 

▼自営業やフリーランスの場合

自営業やフリーランスの人は、国民年金の第1号被保険者に属します。この場合、公的年金として国民年金のみを受け取ることができます。国民年金の受給権者の平均年金月額は2021年の実績では5万6,368円であり、保険料を20歳から60歳までの40年間支払った場合にもらえる2021年における満額は6万5,075円となります。この金額から分かる通り、自営業やフリーランスの人は公的年金のみで生活するのは非常に困難なため、公的年金以外に収入を得るか、事前に十分な貯蓄をし、年金生活に備える必要があるでしょう。

 

▼夫婦2人の場合

2021年度の国の統計によると、夫婦2人分の標準的な年金は月額22万496円です。なお、こちらの金額は厚生年金に加入し、平均的な収入で40年間就業した夫と、40年間専業主婦だった妻という夫婦がモデルとなっています。前述の通り、厚生年金の受給額は収入によって変動するため、全ての夫婦がこの金額をもらえるわけではありませんが、大まかな金額はイメージできるでしょう。では、この金額で安定した年金生活を送ることはできるのでしょうか?実際にかかる毎月の支出額を考えていきましょう。

 

 

毎月の支出額の平均はどのくらい?
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年金だけで生活できるかどうかは、老後生活での毎月の支出額によって変わるでしょう。総務省の「家計調査」(2020年)によると、夫65歳以上で妻60歳以上の夫婦2人、無職世帯の支出の平均月額と、収入の平均月額は以下の表の通りとなっています。

 

※食費や光熱水道費などの生活費を消費支出、税金や社会保険料(健康保険料と介護保険料)などの原則として世帯の自由にならない支出を非消費支出とする。

 

この表から分かる通り、収支はわずかに黒字になっている程度であり、突然の出費に備えられるほどの余裕はありません。万が一のことを考えると、月額30万円程度の収入が必要でしょう。公益財団法人生命保険文化センターが行った意識調査によると、夫婦2人の老後の最低日常生活費の平均は23万2,000円であり、ゆとりある老後生活費の平均は37万9,000円となっています。表の実収入で考えると、最低日常生活費は超えているものの、ゆとりある老後生活費にはおよそ10万円も足りません。以上より、ゆとりある老後生活を送るには、年金以外の収入や、まとまった貯蓄が必要だといえます。

 

 

資金の不足分を補うためにできることは?
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年金だけでは、ゆとりある老後生活を送ることが難しいと分かりましたが、資金の不足分を補うにはどうすればよいのでしょうか?それには、収入と支出の見込額を正確に把握し、その金額を踏まえて資金計画を立てることが大切です。それでは、1つずつご紹介します。

 

▼収入と支出の見込額を把握する

50歳以上であれば、年金事務所の窓口で厚生年金や国民年金の受給見込み額を教えてもらえます。その際は、自分が何歳まで働き、何歳まで厚生年金に加入するかを決めたうえで、正確にシミュレーションすることが重要です。合わせて、年金の未納がないかどうかも確認するとよいでしょう。年金の未納期間があると、その分年金の受給額が減ってしまいます。未納があった場合は、国民年金保険料の支払い免除や猶予を受けていた場合は10年前、受けていなかった場合は2年前まで追納できます。お金に余裕がある場合は、追納できる分を追納しておきましょう。また、勤め先によっては、企業年金の制度が用意されているかもしれませんので、あらかじめ制度の有無や受給見込額を確認しておきましょう。

 

支出の見込額は人それぞれです。支出には、食費や水道光熱費などの生活費である消費支出と、税金や社会保険料などの原則として世帯の自由にならない非消費支出の2つがあります。そのなかでも消費支出は、アクティブでぜいたくな暮らしをすれば跳ね上がりますし、静かで質素な暮らしをすれば抑えられます。自身がどんな老後を送りたいかを考え、それをかなえるにはどれほどの金額が必要なのかを計算しておくとよいでしょう。

 

▼個人で資産を増やす

資金不足を解消するためには、資産を増やすことが有効でしょう。資産を増やす方法としては、以下のようなものがあります。

 

iDeCo(個人型確定拠出年金)

「iDeCo」とは、老後資金を作るための私的年金制度です。定期預金、保険、投資信託などの運用商品のラインナップから好きなものを選択して、60歳になるまで毎月一定額の掛金を拠出することで、運用して得た利益分を含む金額を60歳から受け取れます。iDeCoの掛金は全額、所得控除できるため、確定申告や年末調整の際に申告することで節税が可能です。また、運用で得た利益は非課税となります。なお、2022年4月以降、受け取り開始年齢や加入可能年齢などが段階的に変化していく予定なので、情報をこまめにチェックしましょう。

 

つみたてNISA

「つみたてNISA」とは、積立投資をする際に利用可能な少額投資非課税制度です。積立投資は、毎月決められた一定の金額の投資信託を購入する投資方法であり、投資に対する知識や経験が少なくても手軽に始められる、初心者向けの投資です。つみたてNISAでは、金融庁の基準を満たした投資信託「ETF」にのみ投資できます。ETFとは、証券取引所に上場している投資信託のことですつみたてNISAを利用すれば、年間投資額や期間などに条件はありますが、利益が出た場合は分配金と譲渡益を最長20年間非課税で受け取ることができます。

 

財形年金貯蓄

「財形年金貯蓄」とは、勤務先から支払われる毎月の給与から一定金額が自動で天引きされ、老後の生活資金作りのために積み立てられる制度です。勤務先の福利厚生に財形貯蓄制度が導入されている場合に利用可能であり、積み立てた金額は60歳から年金形式で受け取れます。550万円までは、元利から発生する利息などが非課税の対象となるため、銀行にただ預金するよりもお得に貯蓄ができます。

 

国民年金基金

「国民年金基金」とは、自営業やフリーランスなどの、第1号被保険者を対象とした、国民年金の上乗せ年金制度です。厚生年金がもらえる第2号被保険者との年金格差を埋めるべく誕生した制度であり、これを利用することにより65歳から一生涯、年金が上乗せされます。国民年金基金の掛金は全額、所得控除できるため、確定申告の際に申告することで節税できます。上記でもお伝えしたように、自営業やフリーランスの人は公的年金のみで生活するのは難しいとされます。国民年金基金を利用することで、年金生活がより豊かなものになるでしょう。

 

小規模企業共済

「小規模企業共済」とは、自営業や小規模な法人の役員などが退職時に、積み立てた金額に応じて共済金を受け取れる退職金制度です。小規模企業共済の掛金は全額、所得控除できるため、確定申告の際に申告することで節税できます。また、加入者は掛金の範囲内で事業資金の付与制度を低金利で利用できるという利点もあります。

 

これらのほかにも、個人年金保険、変額年金保険、定額年金保険といった制度もあるため、自分に合った制度を利用して、効率的に資産を増やし、年金生活に備えましょう。不動産投資を行い、マンションやアパートなどの賃貸から家賃収入を得るという手段も有効でしょう。iDeCoやつみたてNISAは、雇用形態に関する加入条件はなく、日本国内に在住する18歳または、20歳以上の人なら、パートやアルバイトでも加入資格があります。手持ちの資金に余裕がある場合は、若いうちからこれらの投資を利用し始めておくのもひとつの選択肢でしょう。

 

▼仕事を続け家計簿を見直す

年金だけで生活が難しい場合は、定年後も働いて収入を得るという手段もあります。再雇用制度や勤務延長制度を利用することで、60代でも仕事をすることが可能となります。また、厚生年金は、70歳まで加入できるため、長く働くことでその分多くの年金を受け取ることができます。2022年4月からは、「在職定時改定」という制度が導入されました。在職定時改定とは、働きながら年金を受給している65歳以上の人の受給額が、年1回見直される制度のことです。この制度ができるまでは、退職時または70歳になったときにしか受給額が増額されることはありませんでしたが、導入以降は納めた厚生年金保険料を早期に年金受給額に反映してもらえることになります。

 

また、60歳以降も働いて収入を得る場合は、年金の「繰下げ受給」を行うこともできます。原則として年金の受け取り時期は65歳ですが、66歳以降最大75歳まで延ばすことも可能です。繰下げ受給を行った場合は、1か月繰り下げることにより年金額が0.7%増加します。そのため、働く余裕があり安定した収入を得られる場合は、年金の繰下げ受給を行うことを検討するのもよいでしょう。しかし、いくら働き続けるといっても体力には限界がありますので、資金の不足が生じそうな場合は、家計簿を見直すことも大事です。家賃や電気代、通信費などの固定費を節約したり、食費や旅行費など浪費を抑えたりと、今のうちから意識しておくことをおすすめします。

 

▼老齢年金生活者支援給付金制度を活用する

今までご紹介してきたことを含めても生活資金が不足しそうな場合は、「老齢年金生活者支援給付金制度」を活用しましょう。老齢年金生活者支援給付金制度は、年金を含めても所得が低い人の生活を支援する目的で設けられた制度です。この制度を活用することで、保険料納付済期間や保険料免除期間に基づいて給付金が支給されます。この制度を受けるための条件は、次の通りです。

 

・ 65歳以上の老齢基礎年金の受給者であること

・ 前年の公的年金等の収入金額(非課税収入を含まない)とそのほかの所得(給与所得や利子所得など)との合計額が、88万1,200円以下であること

・ 同一世帯の全員が市町村民税非課税であること

 

老齢年金生活者支援給付金制度を活用し、少しでもゆとりのある年金生活が送れるようにしましょう。

 

 

年金受給者の確定申告不要制度って?
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年金は、所得の一種であり課税の対象です。そのため、原則的には確定申告が必要ですが、申告手続きの負担を減らすための「確定申告不要制度」というものがあります。年金受給者の確定申告不要制度とは、公的年金等の収入金額の合計が400万円以下、かつ公的年金以外の所得金額が20万円以下の人は、確定申告は不要であることを定めた制度です。上記の範囲内で年金生活をしている人は、特に手続きせず確定申告が不要になります。ただし、医療費控除や生命保険料、配偶者控除、扶養控除などといった所得税の還付を受けたい場合は、確定申告が必要です。また、次のような人の場合も、確定申告を行う必要があります。

 

・ 公的年金の収入金額の合計が400万円を超える

・ 公的年金以外の所得金額が20万円を超える

・ 源泉税控除の記載のない公的年金の源泉徴収票がある

 

自分は申告が必要か不要か分からない場合は、お住まいの自治体の窓口で問い合わせてみるとよいでしょう。

 

 

不足に備えて準備をしよう!
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今後の年金給付額がどのようになっていくかは予測できません。日本の年金額は、「マクロ経済スライド」という仕組みに基づいて決められています。マクロ経済スライドとは、日本の社会情勢に合わせて年金給付額が調整される仕組みです。この仕組みによって、年金の給付額が少なくなる場合もあるかもしれません。ゆとりある老後生活を送るには、老後生活での毎日の支出額を知り、それに向けて事前に準備をすることが必要です。また、できるだけ年金を増やすための対策や情報を知ることも大切です。お金をためるためには、支出を見直すのも有効ですよ。子どもが自立した機会にコンパクトな家に引越したり、複数台所有している車を1台に減らしたり、あらかじめ固定費を減らしておくと安心です。また、出費を考える際には、年金受給によって所得税や住民税が発生するかどうかにも注意しましょう。何かと不安の多い老後ですが、現状を正確に分析して、必要な対策を行えば恐れることはありません。体力のあるうちから準備を進めて、楽しい老後生活を送りましょう!

 

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