■不動産の相続税評価額とは?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
土地や建物などの不動産を相続した際には、相続税が発生するケースがあり、相続税評価額を知る必要があります。相続税評価額とは、定められた評価方法に沿って計算された財産の価額であり、相続税や贈与税の計算をする際に基準となるものです。ただし、相続した財産の合計が基礎控除額を下回った場合、相続税は発生せず、申告する必要もありません。基礎控除額は3,000万円 + (600万円 × 法定相続人数)で算出します。
不動産は物理的に分割できないため、相続した不動産を相続人で分ける場合、相続税評価額を算出して分けることが一般的です。土地や建物を相続した方のなかには、「相続税評価額はどのように計算するの?」「相続税評価額を抑える方法はある?」と疑問に思う方がいるのではないでしょうか?この記事では、相続税評価額の計算方法や相続税額を抑える方法、不動産を相続する際の注意点などについて解説します。
■不動産の相続税評価額の計算方法
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
不動産の相続税評価額は、土地と建物でそれぞれ算出方法が異なります。それぞれの求め方を以下で詳しくお伝えします。
▼土地の相続税評価額の求め方
土地の相続税評価額の計算方法は、「路線価方式」と「倍率方式」の2種類です。計算方法をシミュレーションと併せてご紹介します。
路線価方式
路線価方式とは、路線価をもとに土地の価値を計算する方法です。路線価とは、土地が面する道路に付けられる1㎡あたりの価格のことを指します。国税庁によって路線価が定められている土地は、この計算方法で評価額を算出することができ、計算式は「路線価 × 土地の面積」となります。実際に路線価が5万円、土地の面積が100㎡の場合でシミュレーションしてみましょう。
5万円 ×100㎡ = 500万円
相続税評価額は上記の計算式により500万円となります。路線価は国税庁のホームページの路線価図・評価倍率表で確認できるので、所有している土地に路線価が定められているかチェックしてみましょう。
倍率方式
倍率方式とは、土地の固定資産税評価額に倍率をかけて計算する方法で、路線価が定められていない土地の場合に利用します。固定資産税評価額は、納税通知書に同封、または同じ時期に送付される固定資産税課税明細書に記載されています。届く時期は自治体によって異なりますが、4月~6月ごろが一般的です。固定資産税課税明細書は再発行できないため、届いたら大切に保管しましょう。倍率方式では「固定資産税評価額 × 倍率」で計算します。倍率は土地によって異なるため、上記でもご紹介した国税庁のホームページで確認しましょう。固定資産税評価額が1,000万円、倍率が1.2でシミュレーションすると、以下のような計算式になります。
1,000万円 × 1.2 = 1,200万円
この場合の相続税評価額は1,200万円となります。
▼建物の相続税評価額の求め方
建物は固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。先述の通り、自治体から送られてくる固定資産税評価額は固定資産税課税明細書に記載されています。
■相続税評価額を減額できるケース
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
相続税評価額が低くなれば、納める相続税額も減額できます。ここからは、相続税評価額を抑えられるケースをご紹介します。
▼借地権が設定されている土地の場合
借地権が設定されている土地の場合、相続税評価額が低くなることがあります。借地権とは、第三者が土地を借りて、その土地に建物を建てる権利のことです。借地権が設定されている土地の相続税評価額は、「自用地の価額 × (1 − 借地権割合)」で求められ、借地権割合は30~90%と、地域によって異なります。なお、自用地とは自身が所有する土地のことです。
▼貸家建付地の場合
貸家建付地(かしやたてつけち)とは、第三者に貸すための自用地のことを指し、賃貸物件(一戸建てやアパート、テナントビルなど)が建っている土地が例として挙げられます。この場合、自由に売却したり、更地にしたりすることができないため、自用地にかかる相続税評価額が抑えられます。貸家建付地の相続税評価額は、「自用地の価額 - (自用地の価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)」で求められます。なお、借地権割合および借家権割合は地域によって異なり、路線価図や評価倍率表で確認することが可能で、賃貸割合は、「賃貸されている部屋の専有面積の合計 ÷ 賃貸物件の専有面積の合計」で求めることができます。
▼広い土地の場合
広い土地を相続する場合、条件を満たすことで相続税評価額が抑えられるケースがあります。条件を満たしている土地を「地積規模の大きな宅地」と呼び、条件は以下の通りです。
・500㎡以上の地積の宅地(三大都市圏)
・1,000㎡以上の地積の宅地(三大都市圏以外)
この場合の三大都市圏とは、以下のように定義された地域のことを指します。
・首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地または同条第4項に規定する近郊整備地帯
・近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域または同条第4項に規定する近郊整備区域
・中部圏開発整備法第2条第3項に規定する都市整備区域
また、次の項目に当てはまる場合は、上記の条件を満たしていても地積規模の大きな宅地には含まれません。
・市街化調整区域や、都市計画法で工業専用地域と指定されている地域
・容積率が400%、(東京都の特別区では300%)以上の地域にある宅地
▼土地の条件が悪い場合
土地の条件が悪いと相続税評価額が低くなる可能性があります。条件の悪い土地は以下の通りです。
・形状がいびつな土地
・間口が狭い土地
・奥行きが短かったり長かったりする土地
上記のような土地の場合、その土地に応じた補正率をかけて調整できるため、相続税評価額が低くなる場合があります。
▼小規模宅地等の特例が利用できる場合
小規模宅地等の特例とは、条件を満たすことで相続税評価額を最大80%減額できる特例のことで、適用できれば相続税額を大きく減額することが可能です。ただし、利用するには条件があります。この特例では、相続する不動産が、「住んでいた土地」「事業を行っていた土地」「貸していた土地」のどれに当てはまるかによって、それぞれ細かい条件があるため、当てはまるかどうか事前にチェックしておきましょう。
■相続した不動産を分け合う際の注意点
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
相続人が2人以上いる場合、どちらか一方が家に住み続けて、もう一方が資金を受け取るケースがあり、この場合は遺産分割協議を行います。遺産分割協議とは、相続人全員が遺産の分配について話し合い、合意することです。なお、土地やマンションなどの不動産の価値を「時価」か「相続税評価額」のどちらで計算するかによって受け取る金額が変わります。それぞれを以下で見ていきましょう。たとえば、相続人2名が、5,000万円の不動産を時価で計算し分割すると、以下のような計算になります。
5,000万円 ÷ 2 = 2,500万円
時価で計算する場合、相続人それぞれが2,500万円の資金を受け取ることになります。
一方で、相続人2名が時価5,000万円の不動産を相続税評価額で計算し分割すると、受け取る金額が時価で計算する場合と異なります。というのも、相続税評価額は時価の8割程度になることが一般的であるためです。相続税評価額は以下のような計算になります。
5,000万円 × 0.8 = 4,000万円
相続税評価額を相続する人数で割ります。
4,000万円 ÷ 2 = 2,000万円
それぞれが受け取る資金は2,000万円です。つまり、時価で計算するほうが、もらえる資金が多くなるのです。そのため、不動産を分け合う方法によっては、計算方法を巡って相続人同士でトラブルになることもあります。
たとえば、相続した不動産にそのまま住み続ける相続人は、遺産を分割しても金銭としてもらえるわけではなく、逆にもう1人の相続人に相続不動産の価値分の金銭を渡さなければいけないため、金額が抑えられる「相続税評価額で計算したい」と主張することがあります。一方、不動産価値分の金銭をもらう側はより多くの額を受け取ることができるため「時価で計算したい」と主張する場合があるのです。お互いに話し合っても解決できない場合には調停になり、その場合は、時価で計算するケースが一般的です。ただし、時価で計算する際には不動産鑑定士による鑑定書が必要になります。鑑定書の作成には一般的に30万円程度かかるため、注意しましょう。
■相続した不動産を売却するには?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
相続した不動産を使用しない場合は売却するのも1つの方法です。相続した家を使用せずに、そのまま放置して空き家の状態にしておくとリスクが伴います。たとえば、使っていないのに固定資産税が発生したり、家の管理をする手間や費用がかかったり、ごみを投棄されたりなども考えられます。相続した家に住まない場合には、売却を検討してみるとよいでしょう。
■相続税で損をしないようにしよう
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
この記事では、相続税評価額の計算方法や税額を抑える方法、不動産を相続する際の注意点などについて解説してきました。相続税評価額は相続税の負担額に大きく影響します。土地や家といった相続財産の相続税は高額になるケースが多いため、今回ご紹介した相続税評価額の計算方法を参考にして、自分でも算出してみてくださいね。また、相続税評価額は減額できるケースがあります。知っていれば賢く節税できるため、減額できる方法がないか確認しましょう。