「家を買う」ときに後悔しないための心構え④



 

◎「タラレバ」という落とし穴

 

 

■決断を保留させる「タラレバ」の心理
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「もし、こうだったら…」「あのとき、こうしていれば…」このような、いわゆる「タラレバ」には心理的な罠があります。この考え方にとらわれると、多くの人が決断を保留してしまう傾向があるのです。つまり、「あのときこうしていたら…(もっといい家にめぐり会えた)」という後悔をする人は、漏れなく、「もう少し待てば…(もっといい家にめぐり会える)」といった思いに強くとらわれてしまうのです。

 

「あのときこうしていたら…」と「もう少し待てば…」は、どちらも「if文」です。そして「if=もしも」は、概念上の世界の話です。現実にはやり直しができないことに対して使われます。時間は決して巻き戻せません。そして、誰も2通りの人生を同時に生きることはできないのです。その「if」は、現実的に選ぶことができない選択肢や手段です。にもかかわらず、その概念上の選択肢を現実の選択肢に並べてしまっているのはなぜでしょうか。

 

例えば、旅行の計画を立てるときには、行き先やそこまでの移動手段を考えます。陸路ならば電車やバス、空路ならば飛行機という現実的な手段があります。これは現実に取り得る選択肢です。そのとき、誰も「どこでもドア」や「タイムマシン」を移動の手段として考えません。これらは現実的な手段ではなく、考えるだけ無駄だからです。しかし、マイホームの購入や住宅ローンに関しては、なぜかそういう仮定を持ち出してしまうのです。

 

「あのとき買っていれば…(または買っていなければ…)」「あのとき借り換えていれば…(または借り換えてなければ…)」そして多くの人は前に進めず、決断を保留し続けるのです。

 

 

■今、この瞬間、すでに家を買うプロジェクトは始動している
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家の購入だけでなく、恋愛や職業の選択、結婚、つまり人生にかかわる一大事を前にすると、人はタラレバ思考になって保留してしまいがちです。決断を保留するというのは、それ自体は悪いことではありません。住まいを選ぶことは人生最大のプロジェクトなので、スパスパ決められるような事柄ではないからです。「今は決めない」というのもまた、ひとつの決断だと思います。

 

しかし、時間の流れを止めることはできません。決断を保留するというのは、言い方を換えれば、時間が経過しても仕方がないということを「決めた」ことになります。例えば、家を購入するときは、通常は最初に頭金として多額の自己資金が必要です。「今」家を買うかどうかについて保留したとしても、いざ家を買いたいときに頭金の貯蓄ができていないと、その分リスクの高い住宅ローンを組むことになります。

 

「いつかマイホームを買うため自己資金を貯蓄する」この決断に保留はありません。そう、今この瞬間も「時」は流れています。家を買って「損か」「得か」が決まるのではなく、買う前からすでに家を買うプロジェクトは始動しているのです。