◎「退職金で完済する」は老後破産の危険大!
■「親がそうしたから退職金で完済」ではいけません
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不動産会社や銀行が行う住宅ローンのシミュレーションで、「こちらが頼んでもいないのに変動金利で計算する」というのは有名な「あるある」ですが、もうひとつ大事な「あるある」があります。それは、自分の残りの勤務期間が35年もないのに、「勝手に最長の35年のシミュレーションで計算されてしまう」ということです。なぜかというと、たとえローン完済のときの年齢が80歳だったとしても、35年ローンで計算することで、毎月の返済額の負担が減るように見えるため、ローンを組むことへの心理的ハードルが下がるからです。
さらに毎月の返済額が少ないと、年収に対する住宅ローンの負担が小さくなるので、金融機関の審査にも通りやすくなります。しかし、多くの人は住宅ローンのシミュレーションの年数より先に定年退職を迎えるはずです。ですから、「定年の60歳のときの残高がいくらになるか?」を考えることが重要です。その金額を60歳になるまでに繰り上げ返済しないと、現役のうちに住宅ローンが終わらないからです。
もし、「退職金で払えばいいよ。親もそうして住宅ローンを完済したし」というように考えているのであれば、今すぐ考えをあらためる必要があります。親世代はそれでよかったのです。しかし、団魂ジュニア世代がリタイアして年金を受け取る立場になったらどうでしょうか?働き手はさらに少なくなっています。今あなたがよほどの高給取りであり、多額の年金保険料を払っていない限りは、今の親世代が受け取っているレベルの年金は到底もらえません。つまり、「親がそうしたから」という理由で、親と同じようなマネープランで考えると、自分が退職したとき、かなりの高確率で「老後破産」してしまうのです。
■住宅ローン返済に加えて2000万円の老後資金
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少し前に「老後に2000万円が必要」という総務省の調査結果が炎上しました。これは、「家計収支の赤字を無視して今と同水準の生活をつづける」ならそれだけの蓄えが必要だという試算であり、必ずしも2000万円ないと破産するとは言っていません。しかし、退職金は老後資金にあてる余裕をもった返済計画を立ててください。貯金がなくても大丈夫ということはありません。不動産会社の営業マンは「売るまでが仕事」です。私たちが定年後にローンが返せなくなって家を売却し、残債が残り、年金をやりくりして賃貸の家賃を払いながらローンを返済しようと、まったく関知しません。銀行の融資担当は「貸すまでが仕事」です。私たちが定年後にローンを返せなくなったら、第一順位の抵当権を実行して家を売却すればいいのです。彼は審査マニュアルに沿って融資を実行したまでのことです。
自分の老後は自分にしか守れません。老後破産の当事者は他でもない「自分」だからです。よく、「借りられる金額と返せる金額は違う」といわれます。しかし少子高齢化によって低成長時代に突入した今の時代、肝に銘じなければならないのは、「返せる金額と老後を生きられる金額は違う」ということなのです。