金利変動リスクを自分と銀行どちらが負うか?



 

■金利変動リスクを自分と銀行どちらが負うか?
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住宅ローンの金利タイプについて確認しておきましょう。金利タイプは大きく2つに分けられます。

▼変動金利

銀行が必要に応じて金利を変動させることができる

▼固定金利

借入期間に渡り金利を固定する

 

変動金利は銀行間の資金融通の金利である「短期プライムレート(短プラ)」に影響を受け、その短プラは日銀が銀行に融資する政策金利の影響を受けるといわれます。つまり、銀行が借りてくるときの金利が上がれば、変動金利を上げて確実に儲けられるようにしているのです。これに対して、固定金利は市場の金利がどうなろうが、最後まで金利を変えないので場合によっては銀行が逆ザヤになる(損する)可能性もあります。したがって、変動金利と固定金利の本質的な違いは、住宅ローンの利用者と銀行のどちらが金利変動リスクを負うかというものです。次のように覚えておきましょう。

 

▼変動金利

変動金利リスクを自分が負う

▼固定金利

金利変動リスクを銀行が負う

 

 

●景気と住宅ローン変動金利の基礎知識

短プラは変動するという説明をしましたが、誰が短期を上げたり下げたりしているのでしょうか?それは、日本政府です(日本銀行ともいいます)。短プラは、政府が民間銀行に融資する政策金利の影響を強く受けます。政府は景気をよくするために投資や消費を促進したいときは政策金利を下げます。これが「金融緩和」というものです。反対に、景気の過熱を抑制したいときには投資や消費をしにくくするために政策金利を上げる「金融引き締め」を行います。「景気にブレーキをかける必要なんてあるの?」と思いますよね。わかりやすく解説します。好景気で人々の購買意欲が高まっているときに大量のお金が市場にあると、その国の貨幣の価値がどんどん下がってしまいます。同じモノを買うのに必要な価格が上がる状態です。これをインフレーション(インフレ)といいます。インフレには正常なインフレと過度なインフレがあります。

 

▼正常なインフレ

給与上昇=物価上昇となっているとき。上がった価格が人々の労働に分配されていく

▼過度なインフレ

給与上昇<物価上昇となったとき。原材料や税金など、労働者の所得以外の部分が上がり、人々の生活を圧迫してしまう

 

あまりに景気の上昇スピードが速いと「過度なインフレ」になってしまい、かえって国民の生活を脅かしてしまいます。そのため、日本銀行は国民の生活を守るために過度なブレーキをかけようとするのです。しかし、この利上げ(金融引き締め政策)というのは、タイミングとさじ加減がとても難しいのです。遅ければ、また、利上げが少なければ価格の上昇にブレーキがかからず、過度なインフレになってしまいます。逆に速すぎると、また利上げしすぎると、せっかく上向いた景気が減速し、不景気に逆戻りしてしまいます。少しでもタイミングと量を間違えば、失敗します。どんなタイミングでどれくらい上げればベストかというのは、やってみないとわからないのです。

 

 

●変動金利は止まっており、固定は動いている

「変動金利は止まっています」「固定金利は動いています」というと、禅問答のように聞こえるかもしれませんが安心してください。わかりやすい損得勘定の話です。好景気でインフレ時、政府は投資や消費を抑えるために政策金利を上げますが、不景気のデフレ時は政策金利を下げます。人々の収入が上がり、それが物価に反映して同じベースで物価が上がるゆるやかなインフレ状態では、むしろ、もっと上がる前に、今のうちに家を買おうという心理状態が大勢を占めます。つまり、収入が景気の影響を大きく受ける人にとって、変動金利は負担を一定にする効果があるのです。金利は変動していますが、自分の収入も連動しているので、相対的に自分の目から見たら止まっているのです。それならば、固定金利は相対的に動いているというのはもうおわかりでしょう。好景気のインフレ時には、収入は増えても固定金利は一定のため負担は軽くなります。しかし、不景気のデフレ時には収入が減っても固定金利は一定ですから、負担は重くなります。つまり、収入が景気の影響を大きく受ける人にとって、負担を変動させるのが固定金利なのです。例えば、公務員のように、収入が景気の影響をあまり受けない人にとっては、負担を一定にする効果があるということです。