■日銀の利上げ時期は近付いているのか?
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日銀は2008年のリーマンショックから今に至るまで、政策金利を下げて投資や消費を促し、物価上昇のインフレに誘導しようとしてきました。これとは対照的に、米欧の中央銀行は2022年から政策金利を急速に引き上げています。インフレが広範囲かつ持続的なものとなったためです。世界の投資家は利回りの低い円を売り、利回りの高いドルを買う動きに出ました。現在の円安水準は、日銀が世界の中央銀行とは真逆の金融緩和政策を維持していることから生じています。円安によって輸出を収益の柱とする大企業の業績が好調となり、国の税収は2年連続で過去最高額を更新しました。しかし、円安のプラス効果が少ない一般消費者やマイナス効果となる輸入産業にとっては、ドル建ての食料・エネルギー価格の上昇による悪影響を受け続けることになります。この急激な円安にブレーキをかけるため、日銀が利上げに踏み切る可能性もあるのです。そうなると、すべての銀行が横並びで変動金利を上げるでしょう。
2022年から住宅ローンの固定金利が徐々に上がってきている理由は、いよいよ日銀の利上げが近いと民間銀行が見込んでいるからだと考えられます。しかし、無策に利上げをしてしまうと、金利と為替の両面から景気を悪化させてしまうことは明白です。日本では未だ米欧に見られるような需要の強さを背景とするインフレは発生していません。民間銀行の見込みが外れて日銀が利上げをしないとなると、今の低金利の変動金利を利用した人が得をすることになるでしょう。
一方で、政策金利が上がらなくても民間銀行が損をすることはありません。「上がる可能性が高い」という大義名分のもと、横並びで固定金利を上げて、その間に固定金利を選択した住宅ローンの利用者から高めの金利を獲得することができるからです。金利動向の読みで勝負したところで、民間銀行のほうが圧倒的に有利なのです。