「変動金利は今後金利が上がるから、早いうちから繰り上げ返済しよう」という人がいますが、この住宅ローン控除がある間は繰り上げ返済をしないほうがいいのです。なぜなら、住宅ローン控除の控除率は年末ローン残高の0.7%で一般的な変動金利より高いため、住宅ローン残高が多いほうが得だからです。
「では固定金利のように、金利が0.7%を超えている場合は住宅ローン控除のある13年間または10年間でも積極的に繰り上げ返済していったほうがいいのでは?」と考える人が多いですが、控除がある間は繰り上げ返済しないことをお勧めします。これは損得ではなく資金繰りの安全面からの提案です。家を買うには家の代金以外に税金や手数料などの他、引っ越し代など、思いのほか不随する支出がかさみます。ですから、家を買った直後というのは貯蓄が最も少なくなり、想定外のアクシデントに対して、家計がとても弱くなるタイミングでもあるのです。ですから、家を買ってからしばらくの間、繰り上げ返済をせず、貯蓄に専念すべき時期だと思います。繰り上げ返済をすれば、それによって利息を節約できますが、繰り上げ返済をしたお金は返ってこないからです。
「急にまとまったお金が必要になった」「想定外の事態で収入が大幅に減ってしまった」というときに頼りになるのは貯蓄です。数千万もの住宅ローン残高にかかる固定金利の利息は高いと思うかもしれません。しかし、住宅ローン以外で金融機関からお金を借りると5%くらいの金利を取られます。さらにカードキャッシングなら15%前後です。そもそも住宅ローンの金利は非常に低金利なのです。繰り上げ返済とは、いわば「銀行から利息という利益を奪うこと」です。金利が低いということは、銀行の儲けが少ないことでもあります。少ない儲けを奪っても、当然見返りは少ないのです。
住宅ローンの金利が1%前後の低金利で続いている限りは、あえて繰り上げ返済はせず、まずは住宅を購入する前の貯金額まで貯蓄を戻すこと、次に定年時の住宅ローンの残高を目標に貯蓄をがんばることをお勧めします。