【第1章 空き家の問題と最新の法改正】②「空き家」の何が悪いのか?



 

前テーマにおいて、「空家等」は年間を通じて、誰も住んだり、使ったりしていない建物とその敷地ということを確認しました。しかし、空き家を放置しておくことの何が悪いのでしょうか。

 

 

■自分だけの問題ではなく損害賠償請求されるおそれも
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空き家をそのままにしておくと何が悪いのでしょう。空き家には、大きく3つの問題点があるといわれています。まず1つ目が「保安上の問題」です。つまり、安全面で問題が発生するということです。住宅は、適切な管理がされないと劣化が早く進みます。定期的なメンテナンスをしないと外壁材の剥落や屋根材が落下してしまうといった保安上の問題が生じます。また日本の夏は高温多湿ですから、定期的に空気の入れ替えなどを行わないと、室内に湿気がたまって壁紙が剥がれます。さらに、日々のチェックが行き届かない家屋では、シロアリなどの害虫被害の発見が遅れ、最悪の場合、家屋の倒壊という保安上危険な状態になる可能性があるのです。

 

▼通行人がケガをしたら…

もし放置していた家屋の外壁の一部が落下することなどで、たまたま通行していた人に当たるなどして、その通行人がケガをした場合、たいへんな責任を負いかねません。この点、民法717条では、土地工作物責任という規定があり、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵(欠陥)があることで、他人に損害が生じたときは、その工作物の占有者(現に持っている人)や所有者は、被害者の損害を賠償する責任を負うと規定しています。しかも、この所有者の責任は無過失責任と呼ばれる性質のものであり、損害が発生した以上、責任を負わなければなりません。

 

 

次に、2つ目が「防犯上の問題」です。一般論として、空き家は人の目が行き届いていません。そのため、不審者が出入りしたり、不審火や放火のリスクも高くなります。放置していた家屋が見知らぬ人のたまり場となり、タバコをポイ捨てされて火災が発生したら…などと考えると怖いですよね。

 

 

そして、3つ目が「衛生面・景観上の問題」です。これもまた誰も見ていないことによって、敷地内にゴミが不法投棄されたり、野良猫その他の野生動物の巣となり、それらの排出物による悪臭が生じるといった衛生面も問題が生じます。そして、管理がされていないため庭に雑草が生い茂ったり、庭木が繁殖することで敷地外へと飛び出すことなどで、景観が悪化することもあるでしょう。時期によっては、虫が大量に発生することも考えられます。

 

 

以上の問題点に共通していることは、空き家は持ち主にとっての問題というだけでなく近隣住民に迷惑をかけたり、危険を及ぼす可能性があるということです。その結果、近隣住民との争いごとが発生しかねません。さらに、適切に管理がされていない空き家の存在が、その地域の不動産の資産価値にまで悪影響を及ぼすことまでありうるため、空き家の持ち主だけでなく、地域全体の問題として捉える必要があるのです。