【第1章 空き家の問題と最新の法改正】③「特定空家等」の認定で制裁あり



 

空き家特措法では「特定空家等」という状態の空き家等を定義しています。この「特定空家等」に該当すると、税制面での制裁(ペナルティ)や強制撤去などの強い規制にさらされることになります。

 

 

■空き家特措法で定められる「特定空家等」
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ここまで述べた空き家問題を解決するため、平成26年に「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家特措法)」が、自由民主党空き家対策推進議員連盟による議員立法として成立し、翌年に施行されました。「空き家特措法」を簡単に言えば、空き家の放置を許さない法律です。空き家の持ち主としては、ちょっと怖い法律かもしれませんね。そして、この空き家特措法の2条1項において、12ページで触れた「空家等」の定義がされ、さらに、同条2項は「特定空家等」という状態の空き家を定義しています。

 

 

空き家特措法2条2項

この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。

 

 

やはり、法律は難しい言い回しをしますよね。でも「特定空家等」を簡単に言ってしまえば、適切な管理が行われていない状態の空き家です。おそらく私たちが普段イメージする「空き家」こそが、法律上の「特定空家等」となるでしょう。そして、「特定空家等」をより具体的に言うと、次のようなものが該当します。

 

▼「特定空家等」の具体例

①そのまま放置すれば倒壊リスクが高く、著しく保安上危険となるおそれのある状態の空き家

②建築素材からアスベスト(石綿)が飛散したり、不法投棄されたごみによる異臭が発生するなど、著しく衛生上有害となるおそれがある状態の空き家

除草等の適切な管理が行われていないことにより、著しく景観を損なっている状態の空き家

敷地を越えて枝が伸び放題になっている立木の存在や、野生動物のすみかとなって周辺の生活環境に悪影響を与えている状態の空き家

 

 

■「特定空家等」に認定されるとどうなるか
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では、この「特定空家等」に認定されてしまった場合、どうなるのでしょうか。特定空家等の所有者は、市町村長から、周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとるよう助言又は指導を受けます(空き家特措法22条1項)。しかし、助言又は指導を受けたにもかかわらず状態が改善されないと、今後は勧告を受け、それでも必要な措置をとらなかったときは、市町村長から必要な措置を行いなさい!…という命令がなされます。(同条2項、3項)。また、この命令に違反した特定空家等の所有者は、最高で50万円の過料という制裁(ペナルティ)を受けることがあります。それでもこの命令に従わない場合、最終的には、行政によって除却や修繕など、本来は特定空家等の所有者がなすべき措置・義務の内容が代替的に執行され、行政は、その費用を義務者である特定空家等の所有者から徴収します。これを行政代執行といいます。行政代執行の費用は、全額が所有者負担となります。そして、自身で解体業者に依頼するよりも高額なケースも多いのです。

 

>>行政代執行とは?

>>官報とは?