【第1章 空き家の問題と最新の法改正】④前段階の「管理不全空家等」への制裁



 

改正空き家特措法では、新たに「管理不全空家等」という状態の空き家も定義されました。「管理不全空家等」とは【「特定空家等」の認定で制裁あり】でお話しした「特定空家等」になるおそれのある空き家です。そして制裁もあります。

 

 

■「管理不全空家等」とは何か
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改正空き家特措法では、「空家等」と「特定空家等」の間「管理不全空家等」という新しいカテゴリーを設けました。「管理不全空家等」とは、適切な管理が行われていないことにより、このまま放置すれば、特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認められる空き家のことです。つまり、このまま放置すれば「特定空家等」と化してしまう可能性がある空き家のことであり、「特定空家等」予備軍のような状態の空き家です。

 

 

 

■「管理不全空家等」に認定されるとどうなるか
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特定空家等予備軍とも言える「管理不全空家等」に認定されると、その所有者は、市町村長から、基本方針に即した措置をとるよう指導を受けることになります。指導を受けたにもかかわらず、なお状態が改善されず、そのまま放置することで特定空家等と化してしまうおそれが大きい場合、具体的な防止措置について勧告を受けます。そして、この勧告を受けた管理不全空家等は、固定資産税の住宅用地特例が解除されるのです。※改正前は「管理不全空家等」というカテゴリーはなかったので、その状態では指導や勧告を受けることがありませんでした。

 

 

■固定資産税の住宅用地特例とは
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固定資産税は、固定資産(土地建物など)の所有者にかかる市町村税であり、課税標準額(税額計算の基礎となる金額)一定の税率(1.4%)を乗じた金額の納税が義務付けられています(地方税法350条1項)。ただし、住宅用地には、以下のように課税標準の特例措置が設けられており、税負担が軽減されています。

 

(図-1)

 

 

▼住宅用地の税率のイメージ

 

仮に課税標準額が1200万円ならば、それに1.4%を乗じた額が固定資産税となるので、納税額は16万8000円です。しかし、住宅用地特例により、税額計算の基礎となる額が6分の1となった場合、200万円×1.4%=2万8000円となります。全く異なりますよね。これが、勧告を受けた管理不全空家等では特例措置が解除されるため、最大で固定資産税額が6倍になってしまうのです(負担調整率により、納税額は調整されることがあります)。

 

 

▼空き家の発生の原因!?

固定資産税の住宅用地特例は、原則として、空き家が建っている敷地にも適用があります。改正前の空き家措置法では、いくら空き家を放置していたとしても固定資産税の住宅用地特例が解除されるのは「特定空家等」に認定されてからでした。したがって、「特定空家等」に該当しない限り、空き家をそのままにしておく持ち主が多かったのです。空き家であっても家があることで、前ページの特例措置により税金が安くなったからです。しかし、今後は「管理不全空家等」と認定されて勧告を受けることで、特例が解除されて固定資産税が跳ね上がることになります。

 

 

図-1の「都市計画税」とは、市街化区域内(道路、下水道、公園などの都市施設の整備を積極的に進めている区域)に、土地や家屋を持っている人に毎年課される地方税です。要するに、家や土地が「市街化区域」という区域にある場合、納税しなければならない税金ですが、この都市計画税について特例があり、この特例についても「管理不全空家等」と認定を受けて勧告を受けることで、解除されることになります。そして、どのような場合に管理不全空家等となるかですが、国は「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な方針」というガイドラインによって、以下の基準を示しています。これを受けて、具体的な基準は地域の実情等を踏まえて作成され、市区町村により異なります

 

 

●国がガイドラインで示す管理不全空家等の判断基準

①保安上危険(建築物等の倒壊、擁壁等の崩壊、部材の落下、飛散)

②衛生上の有害(石綿の飛散、健康被害の誘発)

③景観の悪化

④周辺の生活環境の保全への影響(汚水等による悪臭、不法侵入、立木等による破損・通行障害等、動物等の騒音・侵入)

 

 

【管理不全空家等の具体例(市区町村により基準が異なる)】

□建築物が傾いている。屋根が変形している。

□門や塀が破損、腐食している。

□外装材や屋根がはがれていたり、脱落している。

□立木が敷地からはみ出すほど繁殖し、手入れがされていない。

□窓ガラスが割れている。

□雨水や排水が流出している。

□ゴミが放置され、悪臭が発生している。

□動物の棲みつきによる騒音が発生したり、周辺への侵入がある。

□ハエや蚊などの虫が発生している。

□門や扉が破損し、不法侵入が発生している。

 

地域によっては、落雪による通行妨害の発生なども具体例に含まれます。