第1章の最後にマンションの「空き部屋」はどうなるのかという点について触れておこうと思います。結論としては、とあるマンションの一室が空き部屋となってしまったとしても、空き家特措法の適用はありません。
■分譲マンションの空き家問題について
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ここまでの空き家問題は「一戸建て」の実家等をイメージしていましたが、分譲マンションはどうなのでしょうか。マンション(その各部屋)に関しては、1962年に「建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」)」が成立したことで、その法律的な取り扱いが明らかになりました。そして、1964年に開催された東京オリンピックに際し、第一次マンションブームが起きて、都市圏を中心に多数のマンションが建設されます。ですから、「実家が分譲マンションの一室」というのも多くいるでしょう。
そもそも「マンション」は、法律的には「区分建物」と言います。区分建物とは、不動産登記法において「一棟の建物の構造上区分された部分で独立して住居の用途に供することができるものであって、区分所有法に規定する専有部分であるもの」と規定されています。ちょっと読んだだけで「複雑だなぁ…」と思ったでしょうが、実際の権利関係もかなり複雑なのが区分建物の特徴です。
私たちが「マンション」という言葉からイメージするものは2つあるでしょう。分譲マンションのパンフレットの表紙で使われているような「①建物の外観」と、中のページで詳しく紹介されている「②マンションの室内(住戸)」です。①を一棟の建物、②を専有部分といいます。①の一棟の建物、つまり建物全体に1つの所有権があるとしてしまうと、マンション全体を居住者全員で共有していることになってしまうため、②の専有部分、つまり、一住戸を1つの所有権として「101号室はAさん、102号室はBさんの、それぞれ単独所有の不動産」という形になっているのです。
■分譲マンションに空き家特措法は適用されるか?
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結論から言えば、親が住んでいた101号室が空き部屋となり、その101号室だけが管理不良な状態の空き家という状態だけでは、空き家特措法の適用はありません。仮に、ほとんどが空き部屋状態となっているマンションであっても、一住戸でも現に居住者がいる場合は、居住者がいる以上、そのマンション自体は空き家特措法上の「空き家等」には該当しないからです。
これを逆にいえば、誰一人住んでいないマンションが廃墟の状態になっているのであれば、その建物は空き家特措法の対象となり、特定空家等に認定される可能性があります。なお、マンション全体の管理は、先述の区分所有法に基づいて「管理組合」が行います。よって、空き部屋となる1つの住戸を相続するなどして取得してしまった場合であっても、基本的には、マンション全体の管理について、心配する必要はありません。
ただし、昭和時代に建築された高経年のマンションは、居住者の高齢化や、居住者に相続が発生して現所有者と連絡が取れない空き家住戸が増え、適切な維持管理が行われなくなる物件も出てくるでしょう。そして、マンション全体が特定空家等に認定され、行政代執行によって解体されることとなった場合、一戸建てよりも建築物が大きく、堅固(鉄骨鉄筋コンクリート)である分、行政代執行に要した費用が1億円を超えた事例もあります。よって、マンション全体が廃墟となってしまう可能性があるのならば、売却をするなどの対策を講じる必要性があります。