【第4章 既に空き家がある場合(貸すという選択)】①「貸す」ことのメリットとデメリット



 

この第4章からは空き家を「貸す」という選択肢について考えていきます。当然のことながら「貸す」ことについてもメリットとデメリットの両方があるので、まずはこの点から考えていきます。

 

 

■賃料収入と放置による劣化の防止がメリット!
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空き家問題の根本的な解決方法は「売る」という選択であることは、ここまで述べてきたとおりです。とはいえ、空き家を売ってしまった場合、資産である建物と敷地の所有権を手放すことになります。例えば、将来的に実家に戻る予定がある場合や、自分の子どもたちが住む可能性が高い場合などにおいて、不動産の所有権を失ってしまうことは得策とはいえません。これに対して、空き家を貸す場合、つまり賃貸に出す場合は、資産として家屋を保有したまま、毎月の賃料収入を得ることができます。さらに、賃借人が日常的に使用してくれるため、放置による建物の劣化を防ぐこともできるでしょう。ですので、将来的に自分や家族が住むことを考えている場合は、「貸す」ほうがメリットがあると言えます。

 

 

■貸主は「ちゃんとした家」を貸す義務がある
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一方、「貸す」ことのデメリットもあります。まず、空き家の築年数が浅く、状態が良い場合であれば、そのままの状態で貸すことができるかもしれません。しかし、貸し出す前に大規模なリフォームが必要になることもあるでしょう。一定の期間、空き家となっていた建物は、思った以上に傷んでいることが多いからです。また、空き家を賃貸に出した後も、ライフライン設備である給湯器やガス・配電設備の不具合の修繕費用などは、大家さんである不動産所有者の負担となります。家や土地といった不動産に限った話ではありませんが、法律上、貸主である賃貸人には、借主である賃借人に対して「ちゃんとしたモノ」を貸す義務があるためです。貸主は、賃料を支払ってもらう代わりに、ちゃんとしたモノを貸す義務があります。借主の立場になれば「借りた家がまともに使えない…」では困りますね。

 

さらに、他人に貸し出すとはいえ、その空き家の所有者である以上、固定資産税等の納税義務がありますし、各種保険料も必要でしょう。また、入居者が交代する場合には、新しい賃借人の入居前にハウスクリーニングをすることになるでしょうし、一戸建ての場合は、庭の手入れにかかる費用なども、大家さんの負担となります。毎月の賃料収入がある反面、維持等の費用がかかるのも「貸す」という選択肢の一面なのです。