ここまで固定資産税などの話はしてきましたが、「貸す」ことで賃料収入を得た場合、その収入に対する不動産所得税がかかります。賃料をすべて得られるわけではないので、この点も確認しておきましょう。
■忘れてはいけない賃料収入に関する納税
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前に述べたように、空き家を「貸す」場合でも、空き家の所有者である以上は固定資産税の納税義務があります。そして、税金に関して言うと、空き家を貸し出して賃料収入を得ることは「賃貸事業」を営むこととなり、賃貸事業によって得た収入は、税務上「不動産所得」という取扱いとなります。一般的なビジネスパーソン(給与所得者)の場合、勤務先の会社が源泉徴収として税金を支払ってくれるので、自分で確定申告をする必要がありません。しかし、「不動産所得」については、個人事業主として、自分で所得や税金を計算した上で、税務署に確定申告をしなければなりません。そして、不動産所得は「青色申告」という種類の確定申告をするのが一般的ですが、青色申告の際に金額の根拠を提示できるよう詳細な帳簿(複式帳簿)を作成して、保存しておく義務があります。また、帳簿上の数字に間違いがないことを証明するため、多くの書類を収集しておかなければなりません。
◎確定申告とは?
確定申告とは、1年間の収入から必要経費を差し引いた「所得」を算出して、所得を基準に納める税金の額を計算し、国(税務署)に報告する一連の手続きのことです。いわゆるサラリーマンの場合は、勤め先の会社が計算をして税金を支払ってくれますが、個人事業主は、自ら確定申告をしなければなりません。
◎青色申告とは?
青色申告とは、個人事業主が所得税の確定申告をする際に選択できる申告方法です。個人事業主の申告方法には「青色申告」と「白色申告」の2種類がありますが、青色申告を選択すると、税制上の優遇制度を利用することができます。なお、作成した帳簿類や取引に関する書類は、原則として、7年間(請求書や見積書等は5年間)、保存しなければいけません。
上記のように、青色申告という方法で確定申告を行うと税制上の優遇制度が利用できますが、個人事業主で青色申告ができるのは、以下の2つの条件に当てはまる人となります。
▼青色申告ができる個人事業主
・事業所得、不動産所得、山林所得のいずれかがある個人事業主
・所得税の青色申告承認申請書を期日までに提出している個人事業主
青色申告による優遇制度には「青色申告特別控除」というものがあり、最大65万円の控除を受けられますが、この65万円(もしくは55万円)の控除が受けられるのは、事業規模の不動産所得がある人が対象です。一戸建てで言えば、賃貸に利用できる戸数が5棟以上必要となりますので、実家等を相続した場合には当てはまらないでしょう。事業規模に満たない場合、青色申告特別控除の額は最大10万円です。ちなみに、税務調査などで間違いが見つかり、申告を修正する場合は、過少申告加算税を払わなければならず、延滞税も支払う必要があります。このような無駄な出費をしないためにも、空き家を貸す場合は、事業主としての意識を持つことが大切です。このようなリスクを回避するためには、税務のプロである税理士に相談、依頼をして確定申告をしてもらうのがよいでしょう。
■「必要経費」になるものは?
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確定申告は、収入から必要経費を差し引いた「所得」にかかる税金を報告する手続きです。「所得(収入-必要経費)×税率」で算出された金額が納税額になります。そうなると、たくさん必要経費がかかっていれば、納税額が安くなるということになりますよね。そこで、参考に必要経費として認められるものを紹介しておきます。
▼必要経費として認められるもの
①修繕費
空き家の修理費用、リフォーム代など
②保険料
一括払いでも毎年按分して計算する
③管理費
不動産会社などの賃貸管理を委託した場合に支払う手数料
④広告宣伝費
入居者を募集するために費やした広告費
⑤租税公課
固定資産税、都市計画税
⑥減価償却費
建物の経年劣化に伴い減価した費用
⑦雑費
通信費、交通費など
なお、自分は会社で働きながら空き家も貸す場合、給与所得者で、不動産所得が年間20万円以下ならば、確定申告の必要はありません。上記⑤の租税公課とは、国に納める税金である「租税」と、公共団体に納める会費や罰金などを表す「公課」を合わせた言葉です。固定資産税と都市計画税は必要経費になりますが、所得税や住民税は必要経費にはなりませんし、税金を延滞した場合に発生する延滞税も必要経費にはなりません。
▼めちゃくちゃ高い延滞税
納付しなければいけない金額(税額)について、少なくしていた場合や、そもそも申告していなかった場合は「加算税」という追加の税金と、「延滞税」という利息的な追加の税金を納めなければなりません。このうち「延滞税」は、納付期限の翌日から2か月を経過する日までは、原則として7.3%、それ以降は14.6%です。特に納付期限の翌日から2か月を経過してしまった場合は、かなりの高金利となってしまいます。
■念のため、確定申告をする場所も確認しておこう
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確定申告書の提出先は「所属する納税地を管轄している税務署」であり、通常は、住民票の住所がある「住所地」が納税地となります。ひらたく言えば、自分の住所の近くの税務署です。自らの住所地を管轄している税務署がわからないときは、国税庁のWEBサイトにある「一覧から国税局・税務署を調べる」で、郵便番号や住所、地図などから税務署を検索してください。賃貸管理会社に委託している場合は、確定申告についても相談ができるかもしれません。管理会社に賃貸管理を委託する場合には、確定申告についても相談・確認をしてみましょう。